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(今日は紗代子の、新曲のPV撮影をしている。
撮影は順調。予定より早く休憩に入った……)
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お疲れさま。
監督が紗代子の演技を褒めてたよ。
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本当ですか!? よかった~。撮影にむけて、
いっぱいレッスンしてきた甲斐がありました!
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ああ。早めに進行してるのは、そのおかげかもな。
次は難しいシーンだけど、この調子で頑張ろう!
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はい! 次は、涙を流す大事なシーンなので、
全力でやらないと……!
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あっ。スタッフさんに、目薬を使うか聞かれたけど。
どうする、紗代子?
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そのことなんですけど……。
プロデューサー。私、目薬は使いません!
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そうか。でも本当に大丈夫か?
今日までずっと、どうするか悩んでただろう。
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はい……。もし涙がでなかったらって思うと不安で。
でも本物の方が、絶対にいいっていうのもわかります!
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どうしようって悩んでる時に、
ふとアイドルになる前のことを思い出したんです。
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何度もオーディションに落ちて、悔しくて……。
その時の涙を思い出せば、できるんじゃないかって!
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なるほど……。
でも本番で思い出すには、辛い内容じゃないか?
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ああ! 違うんです、プロデューサー!
思い出すのは、悔し涙だけじゃありません!
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アイドルになった後は、感動したり、
嬉しくて泣いたりすることの方が多くて。
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ははっ。そういえば、
感極まってる紗代子を何度か見た記憶があるな。
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えっ!? 私、そんなに泣いてましたか? けど……
それは全部、プロデューサーのせいですよ。
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プロデューサーが、アイドルにしてくれたから
色々な涙を流せるようになったんです。
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紗代子……。そう言ってもらえて嬉しいよ。
じゃあ、今から流す涙は……。
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はい! 悔しかったこと、嬉しかったこと……
これまでの私がたくさん詰まった、最高の涙です!
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ああ。紗代子の気持ちはわかった。
それじゃ、目薬は無しでいこう!
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はい、よろしくお願いします!
そうだ。あと、ひとつだけお願いがあって……。
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その……次のシーン、見ていてほしいんです。
PVを見る人に、私の思いが届くかどうか……。
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(本番がはじまると、紗代子は美しい涙を流した。
今までの彼女の歩みを、映し出すように……)