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(事務室のテーブルの上に、忘れ物があった。
『基礎から学ぶテーブルマナー』……誰の本だろう?)
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いけませんわ、わたくしとしたことが忘れ物なんて……
はっ! プロデューサー!?
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千鶴さん、お疲れさまです。
もしかしてこの本、千鶴さんのものですか?
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へ!? あ、それは……そ、そう!
役作りのために、借りたものですの!
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役作りのため……もしかして今度出演する、
大正時代が舞台のドラマですか?
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ええそう、それですわ! 台本を読んでいたら、
食事シーンがあったものですから……。
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あ、あくまで復習のためですわよ?
マナーなどは、当然身につけていますもの!
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けど、今度の役は大正時代のご令嬢。
ここはすこし堅く、基本通りが良いのでは……と。
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そうだったんですか。
さすが千鶴さん、妥協のない役作りですね!
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え、ええ。セレブなわたくしが基本を学び直すことで、
役柄に説得力が増すというもの……。
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ドラマの撮影が、今から楽しみですわ!
おーっほっほっほ……、ゲホッ、ゴホッ。
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マナーですか……俺なんて、きちんとしようと
すると、つい緊張してしまって……。
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なので、仕事の食事会とか、
味がわからなくなってしまうんですよね。
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あら、プロデューサー。
そんなことではいけませんわ。
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社交の場では、堂々と振る舞うことが大切ですのよ。
余裕のない態度は、周りの人にも伝わりますから……。
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細かな作法に、気を取られる必要などありませんわ。
まずは目の前の食事を楽しむことに集中してみては?
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なるほど……気持ちに余裕を持つ事こそが、
マナーの基本なんですね!
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ええ。気持ちに余裕があれば、町内会の……いえ、
世界中のセレブとの会食だって、きっと余裕ですわ!
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ありがとうございます、少し気が楽になりました。
じゃあ今度は食事会の前に、講師をお願いしますね!
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こ、講師? ……ええ! わたくしでよろしければ、
よろこんで相談に乗らせていただきますわ!
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プロデューサーが社交界デビューする日も
近いですわね! おーっほっほっほ、ゲホッゴホッ!
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(セレブでも驕らないところは、千鶴さんの魅力だ。
今度のドラマでも、発揮してくれるだろう!)