MLTD Archive(β)

ボーイ・ミーツ・ガール

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みんな、集まったな。今日からいよいよ、 『昏き星、遠い月』の立ち稽古開始だ。
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台本の読み合わせはしてきましたが、 こうして立ち稽古になると、気分が変わりますね~。
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ホントだよね!  さ、始めよっか、みんな!
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はあっ、はあっ、はあっ……。 路地裏の、あの死体……。
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間違いない、あれはヴァンパイアの仕業だ。 まだ、この辺りにいるかもしれない……!
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早く、遠くまで逃げないと……! あっ、あそこに誰かいる?
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……。
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おい、そこのアンタ!
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……? 私……ですか……?
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あ……アンタみたいなお嬢さんが、こんな危ないトコで 何してるんだ? ウロウロしてると危ないぞ。
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うふふ……貴方、優しいんですね~?
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ハァ? 何言ってんだか……。
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SE
ガサッ
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……! しまった、来たか!? オイ、アンタ! 逃げるぞ!
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逃げる……私が? ……何故?
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他に誰がいるんだよ!? 説明は後だ、行くぞ!
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はあ、はあ……。ここまで来りゃ多分大丈夫だろ……。 いきなり手を引っ張っちまって、悪かったな。
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いえ……危ないところを、助けていただいた…… のでしょうか? ありがとうございます……。
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……って言うか、なんであんなとこにいたんだ、 アンタ? 見たとこ、どっかのお嬢様だろ。
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ええ、用事があったんです。 ……もう、その用は済みましたが……。
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あんな治安の悪いところに、用事だって……?
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ふふ……。ごきげんよう、優しい紳士さん。 機会があれば、また……。
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……ねぇ、プロデューサー! エドガーとクリスが出会うシーン、どうだった?
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うん、恵美も朋花も良かったと思う。 出だしは順調だな。
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ふふっ。私達なら、当然のことですね~♪ この調子で行きましょう~。
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うん! ……このシーンの次の日も、クリスは、 エドガーの住む治安の悪い街に来るんだよね。
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はい。そして、再び出会うエドガーとクリス……。 ふたりは徐々に惹かれあっていくんですよ~♪
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次は、そのシーンからだ。 ふたりとも、準備してくれ。
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(少しずつお互いを知り、惹かれあっていくエドガーと クリス。だがある日、エドガーが倒れてしまう……)
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……ううっ。 !? ここは……?
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私の家です。貴方、突然倒れたんですよ。道端に、 放っておくわけにはいきませんでしたから……。
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疲れが溜まっていたんですね。服が煤で 汚れていたので、着替えさせてもらいました……。
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!? ……お、オレの体、見たのか……。
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……ええ。
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そっか。……ゴメン。
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どうして謝るんですか……?
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だって、ウソをついてただろ。本当はオレ、 女なのに……ずっと、男のフリをしてたから……。
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母さんが死んでから、ずっと男として生きてきた。 あんな場所じゃ、女は生きていけないから……。
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……騙してゴメン、クリス。
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いいえ。ウソなら、私もついていますから……。
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……え?
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私は……本当は、男なんです……。
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ここで、第一幕の朋花と恵美の出番は終わりだな。 ふたりとも、お疲れさま!
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エドガーが実は女の子で、クリスが実は男の子……。 少し変わった形のボーイ・ミーツ・ガールですね~。
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うんうん! この後の展開が気になるな~……って、 台本読んでるから知ってるんだけどさ。にゃはは♪
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ステキな演技を見せていただきましたわ。 次はわたくし達の出番ですわね!
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ウフフ、私のセクシーな悪女っぷりに、悩殺されても 知らないわよ、プロデューサーくん♪
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私はアレクサンドラの愛らし~い妹、ノエル役ね。 なんだか、寝てばっかりみたいだけど……。
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ま、いいわ。最高にカワイイ寝姿で、観客の視線を クギヅケにしちゃうんだから! にひひっ♪
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聞いたかしら? アレクサンドラ。また罪のない 人々が、ヴァンパイアの毒牙にかかったわ……。
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国王陛下は民を哀れんで、命を下したわ。 わが夫の辺境伯に、ヴァンパイア討滅の勅令をね。
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……バカバカしい。飢えた民の怒りを、 腐敗した王政から逸らすのが目的だろう。
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フフ、そうね。民の血をより多く啜っているのは、 ヴァンパイアではなく、私たち貴族の方ですもの……。
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もちろん、卿にも参加していただくわ。 不浄な怪物どもを討ち滅ぼす英雄として。
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不浄な怪物だと……? 元は人間だ。無辜の民だ。 わが剣は人々を守る剣。理由もなく殺す事などできぬ!
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まあ、なんてご立派な騎士道なんでしょう。 ……けれども、その気高さで誰を救えるのかしら?
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貴女の妹君……ノエルも、人の血を吸う化け物よねぇ。 あの子を匿ってあげているのは、誰だったかしら……?
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……くっ!
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フフ。怖がらないで、アレクサンドラ。 あの子は死なないわ……その剣が私のために働く限り。
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我が妹、ノエルがヴァンパイアに成り果てた あの事件から、数年が経つ……。
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あれ以来、ノエルはエレオノーラの香で眠っている。 香がなければ……我が妹は目覚め、人を襲うだろう。
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ノエルを人間に戻す方法を探し続けているが、 未だに糸口すら見つからぬまま……。
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私は、どうすれば……。
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……お姉さま。
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ノエル。私の愛しい妹よ。 今は夢の中でまどろんでいておくれ。いつか必ず……。
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ええ……なんだか、とても眠いの……。 ……大好きな、お姉さま……。
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……すー……。
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……っ……ノエル……!
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……考えるな。私は剣だ。一振りの刃だ。 命じられたままに敵を討つのみ。今までのように……。
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どうどう!? プロデューサーくん! 私、かなりのセクシーっぷりじゃなかった!?
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うん、いい悪女っぷりだったと思うよ。 セクシーはともかく。
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あ、あら? うーん、レッスンウェアじゃ、 私のセクシーさが表せないのかしら……。
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まだほとんど出番がないのに、この存在感! さすが伊織ちゃんって感じよね♪
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千鶴の演技も、悪くなかったわよ。 貴族の演じ方がわかってるじゃない♪
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え、ええっ! そうでしょう、そうでしょう! おーほっほっほ……ケホッゴホッ……。
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みんな、第一幕の稽古、お疲れさま! 初回とは思えない程、良い出来だったぞ!
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次回は、第二幕の稽古だ。 各自台本を読み込んで、準備しておいてくれ。
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はいっ!
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(今日の稽古は、かなり手応えがあったな。 この調子で、進めていけるといいんだが……)
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