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(仕事の後、あずささんと一緒に劇場に戻ると貴音が
コラムに悩んでいた。ちょうどいいタイミングだな)
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お疲れさま、貴音。
その様子だと、コラム、苦戦してるみたいだな……。
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あずさに、プロデューサー。
ええ、少し悩んでいたところです。
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実はちょっと、貴音ちゃんに相談したいことがあって。
私も、コラムの原稿に悩んでいるの。
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……。もちろんです。私達は同じユニットの仲間。
喜んで相談に乗りましょう。
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ありがとう、貴音ちゃん。
それじゃ、遠慮なく……。
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貴音ちゃんは……歌に、何か
特別な思い入れってあるのかしら?
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歌に、思い入れ……ですか?
そうですね……。
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私は、アイドルとして歌うことを……
最初は、使命と思っていました。
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はい。私が歌う姿を人々に届けること……
それが私には、何よりも大切だったのです。
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ですが、今はそれだけではありません。
私の胸の奥に、確かに……あるのです。
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ただ歌を歌いたいと望む、私自身の気持ち……。
それが何かは、まだ言葉にはできないのですが。
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ただそれは、私が歌い続けることで形になっていく。
そんな気がいたします。
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もしかしたら、それが歌に込められた『想い』とか……
そういうものかもしれないな。
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まあ……。そうですね。
言葉にできないのは『想い』だからかもしれません。
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歌い続ける者ならば、誰もが持つものなのでしょう。
私には私の、千早には千早の……。
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そしてあずさには、あずさだけの想いが。
歌いたいと願う……想いが、きっと。
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いつもは歌で伝えている想い……。それを言葉に
することに、私は難儀しているのかもしれません。
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なるほど……そうだよな。説明するより、
歌を聞いた方が早そうな気もするし……。
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そうね……。
でも貴音ちゃんなら、大丈夫かもしれない。
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あ、ごめんなさい。……ただ、ふと思ったんです。
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貴音ちゃんのファンの人達は、貴音ちゃんの言葉を、
ちゃんと受け止めてくれるんじゃないかって。
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だから……難しく考えないで、心に浮かんだ言葉を
書いてみると、いいんじゃないかしら……なんて。
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浮かんだ言葉を……そうですね。歌を歌うように、
想いを込めた言葉を、紡いでゆけば……。
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……ありがとうございます、あずさ。
何やら、こらむの光明が見えて参りました。
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はっ、いつの間にか貴音の悩みが解決することに……。
あずささんは、どうですか?
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ええ。少しだけですけど、
私もわかってきたような気がします。
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あっ! あずささん、貴音さんも!
千早さーん、ふたりとも控え室にいましたよー!
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あずささん、四条さん。
プロデューサーも、お疲れさまです。
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これから、高槻さん達と歌のレッスンをするんです。
よかったら、一緒にいかがですか?
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レッスンか。コラムを書く前に、
気分転換もいいかもしれませんね、あずささん。
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うふふ、そうですね。それじゃ、みんなと一緒に
千早ちゃんに教えてもらおうかしら?
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良い機会です。千早の修練方法、私達も
ぜひ教えていただきましょう。ふふっ。
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そんな、四条さんまで……! わ、わかりました。
では私なりに、できる限り……!
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(千早の歌声に続いて、やよい達が歌う。
みんなの明るい声が、レッスン室に響き渡る……)
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めぐりめぐるように~♪
まわれまわれ~、いのちよ~♪
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あの、千早さん!
「しじま」って、どういう意味なんでしょう?
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いい質問ね、箱崎さん。
それじゃ、歌詞の漢字を見てみましょうか。
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『静寂』……「静か」と「寂しい」という字を書くの。
物音がひとつもしない、静かな状況を表す言葉よ。
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千早さん、すごーい!
もしかして歌詞の言葉、全部調べてるんですか!?
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ええ。その方が、理解も深まるし……
何より、心の中に入ってくるでしょう?
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わ、私も千早さんを見習って、
これからは歌詞の漢字を、調べて歌います!
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いえ。……私も昔は、みんなのように
楽しく歌っていたことを、思い出したんです。
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あの頃は、ただ歌うことが楽しくて……
歌う理由を、考えたりはしませんでした。
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どうしてあんな風に歌えていたんだろうって……
自分のことなのに、なんだか不思議です。
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不思議じゃないと思いますよ。歌で想いが伝わるなら、
楽しい気持ちも、広がっていくばかりでしょうから。
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もしかしたら、それはあずささんにとって、
当たり前だったのかもしれませんね。
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はい。楽しい気持ちはもちろん、幸せな気持ちとか、
悲しい気持ちとか……優しい気持ちとか。
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あずささんの歌には、伝える力がありますから。
……間違いなく。
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あ……。プロデューサーさん。
私……なんとなく、わかった気がします。
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私の中にある、歌への想い……
私が歌いたいって思う気持ち。それは……。
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ただ、大好きな人たちに近づきたい。繋がりたいって
いう、そんな……たわいもない……想い……。