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あの時、サークルの部室に向かう途中。
偶然一緒になったふたりは、こんな話をしていた……
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トーコ! もしかして、
今からサークルに行くところ?
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サークル、いい人ばかりでよかったわ。
部員はもっといるのかと思っていたけど。
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あー……うん。前は、部員が結構いたんだけど。
去年、大量に辞めちゃって……。
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残ったのは、Lichtと私だけ。その後、新入生で
シンカちゃんとりこちゃんが入ってきたんだ。
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そう……。よくある事だとは思うけど、
理由を聞いておいた方がいい?
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トーコは文字書きだから、大丈夫かな。
……あんまりいい話じゃないよ?
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部員がみんな、Lichtに夢中だったから……かな。
Lichtに憧れて、羨んで。取り巻きになって……。
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仲間だったはずなのに、上下関係ができて。
陰口を叩いたり、足を引っ張るような事もして。
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私はレイヤーだから、直接被害はなかったけど。
でも、売り子を頼まれただけで妬まれたりはしたかな。
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そんな事が……。
どんな場所でも、似たような事があるのね。
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トーコも、デビューしてすぐ、同人で書いてた
マイナージャンルの本、発掘されてたよね。
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ええ。そのジャンルの人に、「目立つ人がいると困る」
「隠れて楽しんでるのに」とか、いろいろ言われたわ。
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ちょうどその頃、賞をもらって……連載の話を
頂いたから。商業に専念する事にしたの。
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やっぱり、そうだったんだ。あんなに好きだった
ジャンルを急に止めたから……気になってたんだけど。
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その頃に聞かれても、
うまく話せなかったと思うから。
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それに……同人活動は、
イヤな思い出ばかりじゃないもの。
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ええ。商業は面白いけど、売れるために必要なのは、
才能や努力だけじゃないから。流行や、運も必要……。
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でも、そこにはない……時代と合っていなくても、
素晴らしいと感じる才能は、たくさん存在しているわ。
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私はそういう作品を見つける事に、喜びを見出すの。
……きっと、好きなんだと思う。同人誌が。
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嫌な事があっても、サークルをやめなかったじゃない。
レイヤー活動なら、個人だっていいはずなのに。
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それは……そうだね。私は衣装作りやコスプレが
専門だけど、同人誌や同人活動は、大好きだよ。
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徹夜で衣装を作って、なんでこんな大変な思いをして
……って思っても、また帰ってきちゃうんだよね。
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私達は、コミベのメインストリームではないけれど。
『好き』と『表現』に、貴賤はないはずだから。
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うん。……私は私のやり方で、
それを証明してみせるよ!
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ねえ、トーコ。せっかくサークルに入ったんだし、
レイヤー活動も再開しない? 衣装なら作るよ?
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再開って……私は別に、レイヤーじゃないし。
千花夏が着ろっていうから、着ただけでしょ。
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え? でも、結構ポーズとか決めてたよね?
「宵闇(ヨイ)さん、視線もらっていいですか~?」
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……!
そ、そっちの名前はもう使わないからっ!
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ごめんごめん!
置いていかないでよ、トーコ~!