MLTD Archive(β)

見えない壁

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―数日後―
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エミリーちゃん、青いペンを貸してもらえますか~? ……? エミリーちゃん?
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……はっ、美也さん……! すみません、青い筆でしたね……どうぞ。
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ありがとうございます~。 ぼんやりしていましたが、どうしたんですか~?
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かるたの、自分の読み札を考えていたんです。 でも、ちょっと思いつかなくて……。
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自己紹介、なかなか難しいですからね~。 焦らずゆっくりでいいと思いますよ~。
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そう、ですよね……。 あの、私、ちょっと散歩してきます!
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劇場、思っていたよりもずっと広いです……。 ? いい香り……。これは……?
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…………♪
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ひゃうっ!? あ、あなたは……!
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あっ、ごめんなさい! びっくりさせてしまって…… あの、篠宮可憐さん、ですよね?
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え、あ……ええと……。
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私、エミリー・スチュアートと申します。 可憐さんと同じで、大和撫子を……目指しています。
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し、篠宮可憐です。エミリーちゃん……、 美也さんたちと、かるたを作ってる子だよね……?
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あ、はい! ご存じだったのですか?
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う、うん……じつは、楽しそうだなって思って、 見てたんだ……。
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ずっと、話しかける勇気が、出なかったけど……。 あ、あの、今日はもう終わりなの……?
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いえ、みなさんまだ作業中です。……私は、その…… 息抜きの散歩をしていて……。
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エミリーちゃん……?  あの、息抜きなら、ここで……ゆっくりしてみる?
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ちょうど今、カモミール……アロマを焚き始めたの。 私、携帯用のディフューザーを持ってて……。
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はあ……♪ とても心地いい香りです……。 ありがとうございます、可憐さん。
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ううん。す、少しでも、リラックスできたのなら、 よかった……♪
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……。もしかして私、ご心配をおかけして しまったのでしょうか……?
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う、ううん、そんなには……。 あの、ちょっとだけ……。
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やっぱり……ごめんなさい。
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……なにか、あったの?
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……。じつは今回、みなさんのかるたを作っていて、 あらためて、気が付いたんです。
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た、たいしたことではありません! そもそも、当たり前のことなんですけど……。
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私の名前には、どこにも……漢字も平仮名もなくて。 みなさんとは違うんだな、って……。
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名前……。えっと、エミリーちゃんは、 イギリスから来たんだよね……?
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はい、英国人です。 あの、両親も日本のことが大好きで……。
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私も、大和撫子のみなさんと一緒に精進すれば、 きっと近づけると思っていたのですが……。
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ここ数日、みなさんが親しくしてくださって…… むしろ自分の至らなさが、よく分かりました。
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エミリーちゃん……。
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美也さんのような発想も、恵美さんのような気遣いも、 ロコさんのような才能も、私にはありません。
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それに可憐さんのような、艶やかさも奥ゆかしさも。 ……さすが、みなさん生粋の大和撫子です。
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わ、私は全然そんなんじゃないよ!? ……あ、ううん。そ、そこじゃなくて……!
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本当のことです。やっぱり、英国人の私が、 大和撫子を目指すなんて……。
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あのっ、えっと……! ……わ、私! エミリーちゃんに、言いたいことが……!
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あ~っ! いたいた、エミリー!
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