1
どう考えても悪手だ。逃げ切りに徹した方がいい……
アンタこれまでのこと、全部ムダにするつもりかよ!
2
バーカ、命の張りどころの間違いだろ? ここで勝負を
降りたら、オレがオレじゃなくなっちまうからな!
3
(撮影開始、前日。歩と麗花に頼まれて、
ふたりの自主練習に立ち合っている……)
4
ふぅ~……プロデューサー!
今の、どうだった?
5
うん、前よりも良くなったと思う。
監督の言っていたギャップが、際立った感じだな。
6
うんうん! あゆあゆのリイチ、
すっごくカッコイイよ♪ どうしたら、そうなったの?
7
う~ん、そうだな。アタシなりにだけど、リイチに
向き合ってみたというか……いろいろ考えてみたんだ。
8
役の事を考えるのは、何より大事だからな。
歩は、リイチの事が理解できたのか?
9
理解っていうか……リイチって凄腕のギャンブラーで、
すっごい豪運の持ち主でしょ?
10
だから、アタシとは全然違うんだけど……アタシなんて
今朝も家出た瞬間、靴紐がほどけちゃったし。
11
慌てて結ぼうとしたらカバンの中身が全部落ちて、
結果、乗ろうとした電車が目の前で行っちゃって……。
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あゆあゆは、今日も元気にあゆあゆしてるね♪
そういうところも、とってもカワイイと思うな。
14
全然フォローになってないんだけど……
まぁ、それはともかく。
15
リイチは世界一のギャンブラーになる夢を持っててさ。
そういう熱いところは、アタシと同じかもって。
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そうだな。歩は世界一のダンスアイドルになるために
日々頑張っているもんな。
17
うん。そう思ったら、
親近感が湧いたっていうのかな?
18
リイチは今、運の強さだけじゃ乗り越えられないことに
立ち向かってる……それって、すごくカッコイイよね。
19
だから、できるだけカッコよく演じたい!
……ってね♪
20
まあ、そうは言ってもアタシだから。
どこまでできるかはわからないけど……えへへ。
21
いや。その気持ちは、演技にも現れていると思うぞ。
この調子で頑張ろう!
23
資料の整理をしてたら遅くなっちゃったな……
明日は撮影本番だ。そろそろ上がって早く寝ないとな。
24
プロデューサーさん、お疲れさまです。
まだ残ってたんですね、良かった♪
26
はい。あの、私……チトセくんと、お友達に
なりたいんですけど。どうしたらいいと思いますか?
27
と、友達? ……というかチトセって、
麗花が演じてる?
28
はい! 私、チトセくんに声をかけてあげたり、
一緒にドライブに行こうって誘ったりしたいんです。
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だって、ひとりきりって、寂しいじゃないですか?
31
初めて脚本を読んだ時からずっと思ってたんです。
「チトセくん、なんだか寂しそう」って。
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私、チトセくんが言うみたいな、見下すとか。
そういうのはよくわかりませんけど……。
33
でも……寂しいって気持ちは、わかりますから。
誰かのことを、「いいな」って思う気持ちも。
35
チトセくんは世界中を敵みたいに思っていて、だから
みんなの事が嫌いで。でも、本当は違うと思うんです。
36
チトセくんは、誰かの仲間になりたい。みんなのこと、
好きになりたいんじゃないかなって……。
38
私、チトセくんに教えてあげたいんです。世界の
どこかに、わかってくれる人が絶対にいるよって。
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でもでも、私とチトセくんは、
住んでる世界が違うから……。
41
だから、どうしたら友達になれるのかなって。
ずっと考えてたけど、どうしてもわからないんです。
42
そうだな。それには……麗花が、チトセのことを
しっかり演じるのが一番なんじゃないかな。
44
麗花が、チトセは本当はこういう子で、
こんなふうに寂しさを抱えてる子なんだって……
45
他の登場人物や、映画を観てくれる人達に、お芝居で
わかってもらうんだ。それが一番いいと、俺は思う。
46
私の演技で、チトセくんを知ってもらう……
そしたら、チトセくんは寂しくなくなる……?
47
そっか……そうなんですね。わかりました。それで
チトセくんが寂しくなくなるなら、私、がんばります!
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プロデューサーさん、
アドバイスありがとうございました!
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どういたしまして。
明日からの撮影、頑張ろうな!
50
(麗花は、チトセという人物が感じている寂しさに、
ずっと共感してたんだな……)
51
(寂しさを知るからこそ、それに気づく。
麗花ならきっと、チトセを演じられるはずだ)