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エミリーの場合:大好きなもの

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(エミリーはやはり和を取り入れたいとのことで、 浅草にある呉服屋にやってきた)
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(ここで着物を見繕ってもらって、 撮影に挑む予定なんだけど……)
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あの、ではこういう色合いのものは……? 裏地も素敵で……。
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あー、そりゃこの時期のもんじゃないよ! ほら、季節が合ってないだろ?
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それと、八掛にこだわって玄人ぶるのは百年早いって もんさ! 柄と帯の組み合わせをちゃんと考えてから!
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う、すみません……。 憧れがあって、つい……。
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あの、ではこれは……?
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銘仙ね。悪くないけど、その柄だと金髪が品なく 見えるじゃないか。アンタには似合わないねぇ。
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あ……。
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……まったく。せっかくうちに来といて、 困ったもんさね。ちょいとごめんよ!
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SE
タッタッタ……
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(言うだけ言って引っ込んでしまった。 だいぶチャキチャキ系の女将さんだな……)
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……。
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あ、あの……っ! ありさはエミリーちゃんの金髪、大好きです!
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……? はい、私も気に入っていますよ?
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あ、あれ? それなら、よかった……デス。
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あ、もしかして……。 ふふっ、大丈夫です。ありがとうございます。
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落ち込んでは、いないんだな。
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はい。女将さんの言っていることは 正しいと思いますから。
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金髪に合う着物は限られることは、 最初から、わかっていたんです。
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強いんですね、エミリーちゃんは……。
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とんでもありません。 そんな立派なことではなくて……。
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こういうことは、よくあるんです。 大和撫子になりたいと夢見た時から……。
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いえ、英国にいる頃、父から日本のことを 伝え聞いていた頃からでしょうか。
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英国とはまるで違う伝統と文化。手を伸ばしても、 飛び込んでも、なかなか手が届かなくて……。
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イギリスと日本じゃ、言葉も文化も考え方とかも、 いろいろ違うからな。髪の色だけじゃなくて……。
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はい。かといって、生まれ育った 英国が嫌いというわけではありません。
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無理に黒髪に染めようとは思いませんし、 紅茶や、父や母のことも大好きです。
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英国での思い出も、日本への憧れも…… 私にはどちらも大切で、愛しいものです♪
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どっちも大切で、愛しい……。
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あ、もちろん、自分に都合のいいことばかり 言っているとは思うのですが……。
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そ、そんなことは……!
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SE
タッタッタ……
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待たせたね。 目録、持ってきたよ!
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Wow! きらびやかな振袖ばかり……! 小紋ではなくて、いいんですか……?
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ここまで来て半端な遠慮するもんじゃないよ! 華の塊みたいなナリしてんだから、素直に振袖!
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アンタ姿勢がいいんだから、衿芯も帯板も しっかり入れて、絵羽模様びしっと決めな!
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さあさ、ここまで持ち出させたんだ! 遠慮はナシだよ!
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は、はい! よろしくお願いします!
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……!
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(エミリーは輝くような笑顔で目録を眺め、 選んだ振袖で見事な一枚を撮ることとなった)
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(残るは亜利沙だけど……。 どうやら心は決まったみたいだな)
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