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(のり子たちは、今日からレッスンだったな。
ちょっと、様子を見に行ってみるか……)
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……今、熱気の渦巻くリングに、
新たな伝説が刻まれようとしている!
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765プロタッグマッチ、60分一本勝負!
それでは、各選手の入場です!
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青コーナー、『メガネの奥の爆炎』!
92ポンド、高山、紗ァー代ォー子ォー!
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正々堂々、真っ向勝負です。
なにもかも、焼き尽くしてみせます!
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そして……『元祖踏み台殺法』!
77ポンド、周防、桃ォー子ォー!
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えっと……ファンのみんな!
桃子から目を離したら、ラリアットだからね。
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続いて、赤コーナー……『カラテの王子様』!
97ポンド、菊地、真ォー!
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セイッ! ハッ! ヤーッ!
安心して! 顔は狙わないから!
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そして最後は……『戦慄の満漢全席』!
99ポンド、佐竹、美ィー奈ァー子ォー!
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お腹が空いたら、佐竹飯店!
お得なセットメニューもありますよ♪
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765プロの頂点が、ついに決まろうとしています!
世紀の一戦を、見逃すなっ!
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おーい、ちょっと待ってくれ!
これは何をしてるんだ?
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お~~~~~っと!
ここで、プロデューサーの乱入だーっ!!
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あ、お疲れさまです! のり子さんに教えてもらって、
プロレス風のMCの練習をしてたんですよ。
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ほら、今回ってリングがステージなんでしょ?
それならリングアナ風にMCができないかなーって。
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そういう事か……確かに、面白いかもしれないけど。
レッスンはどうしたんだ?
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ふふん♪ もう終わったよ。
お兄ちゃん、ちょっと来るのが遅いんじゃない?
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はいっ、プロデューサー!
安心してください、ダンスもしっかりやってますから。
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真ちゃんが見てくれてるんですよ。
ちょうど、一段落したところだったんです。
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そうだったのか……。
休憩中にもMCの練習なんて、気合い入ってるな!
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はい! プロレスのリングで公演なんて、
面白いじゃないですか。くぅ~っ、燃えるなぁ!
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アタシ、とにかく熱いステージにしたいんだよね!
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観客のみんなにも、選手の人たちにも、
元気になってもらえるようなさ!
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でも、ホントにこれでいいのかな……?
桃子たち、アイドルなのに。
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いいんじゃないか? みんなも楽しそうだったし、
きっとお客さんも楽しんでくれるよ。
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ふふっ! そうですよね。
実は私も、けっこう楽しくて♪
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まあ……桃子も、ちょっと楽しかったかも。
でも、ちょっとだけだからね!
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よーしっ! この勢いで、本番のリングまで
全力で駆け抜けるから。みんな、よろしくねっ!
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まかせて! のり子の背中はボクたちが預かるから、
最高に熱いステージにしよう!
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うんうん! のり子ちゃんが全力を出せるように、
私たちもサポートするからね♪
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みんなの熱意はありがたいけど、そろそろ
終了時間だな。みんな、レッスンお疲れさま!
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そうですね。無理をしたら先が続かないし。
今日は終わりにして、明日また頑張ろう!
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(やれやれ、事務処理は何かと時間がかかるな……
そろそろ帰らないと)
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あれっ? のり子。
まだ帰ってなかったのか。
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えへへ、ちょっとね。
プロデューサーのこと、待ってたんだ。
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うん。あのさ、えーっと……あ、お腹減ってない!?
何か食べて帰ろうよ! アタシ、焼肉がいいなっ。
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レッスン頑張ったから、今日はガッツリ
お肉とか食べたーい!ってカンジなんだよね!
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あっ……でも、もう遅いか。
じ、じゃあ、軽く食べられるものでも……!
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のり子、大丈夫か?
……何か悩みがあるなら、話してみてくれ。
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え……えっと……あは、あはは!
アタシって、わかりやすいのかな? はは……。
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センター……ホントに、アタシでよかったの?
別の子のほうが、よかったんじゃないかな?
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もっと有名な、アイドル~って感じの!
たとえば春香とか! やっぱ、カワイイしさ!
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のり子……?
どうして急に、そんな事を言うんだ?
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あ、あはは。な、なんか、涙出てきちゃった!
ごめん、ちょっとタイム! なんでもないからっ!
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不安があるなら、全部話してくれないか。
上手く言えなくてもいいんだ。ちゃんと聞くから。
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はぁ……やっぱりアタシ、自信ないよ~……。
アタシなんて、まだアイドルとしてヒヨッコだし。
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パフォーマンスのレベルも、全然だしさ。
お客さんは、プロレスファンの人たちでしょ?
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そんな中で、会場を盛り上げるなんてできないかも……
そしたら迷惑かけるかも、って考えちゃって……。
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そうか……のり子の気持ちはわかったよ。
けどやっぱり、今回のセンターはのり子しかいない。
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プロレス団体の、新人興行だって言っただろ?
同じ立場ののり子が、ピッタリだと思うんだ。
63
そうだな……新人興行に出場する選手たちと
のり子、どこが同じだと思う?
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え? えっと……。
デビューしたばかり、ってこと……?
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そうだな。どっちも、これからどんな風に育っていくか
未知数……同じほうが、いいと思ったんだ。
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アイドルにも試合にも、フレッシュな可能性が
感じられる公演にできたら、最高だと思わないか?
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そうだったんだ……。単純に、プロレスだから
アタシなのかと思ってたよ……あはっ!
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もちろん、それも大きいよ。
のり子は格闘技が好きだったよな?
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そりゃあ、大好きだよっ!
見てると熱くなるし、パワーを感じるっていうか……。
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勝ち負けもそりゃ、大事だけど。選手たちが
力を振り絞って戦う姿が、何よりカッコイイんだよね!
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そうか。……一番大事な事、
のり子は、ちゃんとわかってるんだな。
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のり子が感じているその気持ちを、全力でぶつけてきて
ほしい。熱い思いは、不器用でも通じるはずだ。
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わ、わかった……やってみるよ! そうだよね、
アタシ、まだ新人だし。全力でぶつかるしかないよね?
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失敗を怖がってたら、勝てる試合にも勝てないし。
元気が、アタシの取り柄だっ! やってやる~!
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えへへっ。ありがとね、プロデューサー!
すっごい元気出た!
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(こぼれた涙の跡が嘘のような、晴れやかな笑顔。
これなら、心配なさそうだ……頑張れ、のり子!)
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あ、プロデューサー!
ねえねえ、見た? チケット売り場とか、売店とか!
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スタッフの人、新人選手なんだよ! ホントに
アタシたちと……劇場のアイドルと、同じなんだね。
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みんな、すごく初々しくてさ……。
絶対、元気を届けなきゃ!って気になったよっ!
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よし、その意気だ!
リングサイドで見てるから、いい試合にしような!
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うん! アタシ、精いっぱいぶつかってくるから……。
セコンドよろしくねっ、プロデューサー!