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(歌織さんの新曲公演の準備が始まった。
メンバーは歌織さんを中心に、自主練しているようだ)
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みんな上手よ、その調子!
じゃあ次は、全員で合わせてみましょうか。
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あれ? なんだかみんな、
いつもよりよく声が出てるような……?
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あら、プロデューサーさん?
いらしたなら、声を掛けてくださればいいのに。
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あ、すみません、邪魔する気はなかったんですが……。
可奈、どうしたんだ? 凄く上達してるじゃないか。
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本当ですか!? やったやった~!
ついに私の才能が目覚めたのかな~♪ えへ♪
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ふふっ、歌織さんのレッスンのおかげだと思います。
可奈の音程が、あっという間に治って。
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要点や改善点が明確で……。桜守さんの指導は、
聞いているだけでも勉強になります。
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もう、千早ちゃんまで……違いますっ。私じゃなくて、
可奈ちゃんが頑張ったから上手になったのよ?
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それに可奈ちゃんには、歌を楽しむ才能があるもの。
きっと、もっと上手になれると思うわ。
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わあ……♪ うれしいですっ!
ありがとう~♪ みんなのお姉さん~♪
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はい! わたし、歌織さんのことを、本当のお姉さん
だと思っていいって言ってもらえたんですけど……。
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星梨花ちゃんだけっていうのはずるいので、私たちも
お姉さんだと思うことにしました!
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そ、そうなのか。
まあ、歌織さんがいいならいいけど。
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もちろん、私はとっても嬉しいんですけど……。
でもみんな、大事なことも忘れないでね。
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確かに私は、みんなよりお姉さんだけど……。
アイドルとしては、みんなと同級生。
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それどころか、千早ちゃんから見れば、
後輩なんだから。
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まあ……歌織さんは音楽の先生でしたけど、
アイドルとしての芸歴でいえば、そうなりますね。
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アイドルとして……。そういう意味では、確かに。
すみません、桜守さん。私、つい甘えてしまって。
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あ、いいのよ千早ちゃん!
私、遠慮してほしかったわけじゃなくて……。
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いえ、遠慮とは違うと思います。ただ、私達が
目指しているのは、桜守さんの新曲披露の公演。
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なら桜守さんは、自分のレッスンに集中するべきです。
自主練での指導役は、私が……。
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あ、もちろん、みんなもそれでよければ、だけど……。
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よろしくお願いしますっ! 私達も、つい歌織さんに
甘えてしまっていました……。でも、そうですよね。
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千早さんに教えてもらえるなら、歌織さんに教えて
もらうのとおんなじくらい、うれしいです♪
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歌織さんが安心して、たくさん練習できるように……
わかりました! 千早さん、よろしくお願いします♪
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みんな、想いは同じみたいですね。
歌織さんに、満足のいく練習をして欲しいんです。
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他の誰よりも、歌織さんが胸をはって
ステージに立てるように。
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はい……。みんな、ありがとう。
それから、私のほうこそごめんなさい。
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私も、みんなに心配かけないように、
しっかり練習させてもらうわね♪
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らんら~ん♪ ラララ~……あ、あれっ?
私、歌が下手になってる~!? ち、千早さ~ん!
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えっと……矢吹さん、もしかして、
まだステップを覚えてないんじゃ……?
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えっ? でもでも私、ダンスは間違えてなかったと
思うんですけど……?
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……その代わり、歌に集中できていないのかも。
自然に踊れるようになれば、意識が音に向くと思う。
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歌のことはいったん忘れて、
まずダンスをしっかり覚えてみたらどうかしら。
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そ、そっか、歌とダンスってひとつですもんね!
ダンスのレッスンしなきゃ~!
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あ、あの、千早さん!
私、サビの声の出し方に、少し悩んでいて……。
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それなら、私とふたりだけでやってみましょう。
静香は下のパートだったわね。
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プロデューサーさん。
千早ちゃん、やっぱりすごいですね……。
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そうですね。経験を踏まえてのアドバイスだから、
内容も実践的で、役に立つと思います。
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私よりもずっと経験豊富ですものね。
少し、うらやましいです。
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でも、歌織さんのほうがお姉さんですよね?
いろんなことを経験してるんじゃないんですか?
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星梨花ちゃん。そうだけど、そうじゃないの。
千早ちゃんの方が、私よりずっと先輩なのよ。
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私は……たくさん、回り道をしてしまったから。
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プロデューサーさん。
私、最近、考えてしまうんです。
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もし、もう少し早くアイドルになっていたら、
どうなっていたんだろう、って……。
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それは……つまり、歌織さんが高校生とか、
中学生の頃にってことですか?
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はい。もっと早く、プロデューサーさんに
出会えていたら……私、どうなっていたと思いますか?
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そうですね。歌織さんのことですから、きっと……
もうトップアイドルになっていたかもしれません。
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まぁ。……ふふっ、ありがとうございます。
でも、だとしたら、やっぱり私……。
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いろいろな経験をして、声楽の勉強をして、音楽の
先生になって、それからスカウトに応えてくれた。
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俺がプロデュースしているのは、そんな……
今ここにいる、あなたですから。
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あ、あのっ、歌織さん! わたしも、今の歌織さんと
一緒にアイドルできて、とってもうれしいです。
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歌織さんは素敵な大人の人で、優しくて、お姉さん
みたいで……そんな同級生だから、素敵なんです!
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星梨花ちゃん……。ありがとう!
私も毎日、みんなと一緒で、とっても楽しいわ。
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こんなにかわいい、素敵な同級生に囲まれて
いるのに……。ヘンなこと言ってごめんなさい。
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ええ、もう大丈夫♪ プロデューサーさんと
星梨花ちゃんたち、劇場のみんなのおかげね!
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歌織さん、ちょっといいですか?
一度通しで合わせてみたいんですけど……。
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いいえ、是非、やってみましょう!
私、今すごく、みんなと一緒に歌いたい気持ちなの♪
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よかったです♪
静香さん、わたしもすぐに準備しますね!
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ららら~、らららら~♪
あっ! できたっ、できましたよ千早さ~ん!
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ふふっ、お疲れさま、矢吹さん。
よく頑張ったわね。
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ありがとうございます♪
えへへ、千早さん、もっと教えてください!
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もっと……? わかったわ。
それじゃあ、次は……より厳密に。
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ふぅっ……!
どうでしたか、プロデューサーさん?
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バッチリです! 新曲もあっという間に
自分のものにしちゃいましたね。さすがです。
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よかった……、ありがとうございます♪
でも、少し、違うかもしれません。
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歌を自分のものにしたわけじゃなくて。
歌が私を楽しませてくれた……。そんな気がしました。
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プロデューサーさん、こんなに素敵な歌を
私にくださって……本当に、ありがとうございます。
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見ていてくださいね。大好きなみんなと一緒に
作る、歌織の……新しいステージを!
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(歌織さんの瞳が、強い輝きを宿している。
素晴らしいステージを、予感させるような)
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(見せてください、歌織さん……。
今の歌織さんの、全部を!)