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メインコミュ 第 78 話 公演前 2 / 5 パート

その手をひらけば

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翌日……
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(今日は、午後から次の定期公演のミーティングだ。 メンバーは決まったし、あとはレッスンを……ん?)
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お疲れさま、志保! ずいぶん早いんだな。
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あ……プロデューサーさん。 お疲れさまです。
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新曲の事だけど、希望は決まったか? ステージの演出の事とかでも……。
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あ……すみません。昨日は、バタバタしていて…… その、考えるのを忘れていました……。
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え、そうなのか? 志保が仕事の事を忘れるなんて、 珍しいな。家で何かあったのか?
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……そんな、大したことじゃないんですけど。 昨日は、弟が体調を悪くしてしまって……それで。
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そうだったのか。小さい子はすぐに具合が 悪くなったりするみたいだし、大変だよな。
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……。
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志保? ……今、時間があるよな。少し話せるか?
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あ、はい……。
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…………
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……そういうわけで。私のお給料は、 母が全部貯金していたみたいなんです。
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そうか。見つかっちゃったんだな。
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見つかっちゃったんだな、って…… プロデューサーさん、知ってたんですか?
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ああ。前に志保のお母さんと話をした時に、 貯金しているって聞かせてもらったよ。
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そんな…… どうして、教えてくれなかったんですか。
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それって、私の……私なんかのお給料くらいじゃ、 全然、役に立たないってことじゃないですか。
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役に立たないなんて、そんな事はないよ。 志保はちゃんと、お母さんの支えになってるんだから。
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そういうの、いいです。 そんな……なぐさめるみたいなのは。
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それに、母も言ってましたから。私が働いてお金を 稼いでも、家にいられないことには変わりないって。
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だから……私が仕事をしても、意味がないんです。 ちっとも、役に立ってない……。
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そんな事はないよ、志保。 お母さんは……。
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私にかまわないで……放っておいてください。 ……失礼します。
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あっ、志保?
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SE
ガチャ、バタン!
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あっ、志保ちゃん! もう来てたんだね……?
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志保、どこに行くの? これから公演のミーティングじゃ……。
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待ってくれ、志保!
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プロデューサーさん。 志保、どうかしたんです?
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志保ちゃん、なんだか顔色が 悪いように見えましたけど……。
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風花、奈緒、ちょうど良かった。 今日のミーティング、任せていいか?
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詳しいことは、机の上に置いてある スケジュール表を見てくれ。すまない、頼んだ!
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あっ……は、はい! わかりました、奈緒ちゃんと進めておきますね。
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私らで、しっかりやっときますから。 こっちのことは心配せんでええですよ!
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ありがとう! 志保の行きそうな場所は……あ、そうだ!
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あ、もしもし? すみません、765プロの プロデューサーと申しますが……。
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…………
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この公園、久しぶりに来たな……。 前に来たのって、私が小さいころだったっけ。
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りっくんは、まだ生まれてなくて。 私とお母さんとお父さん、3人だった……。
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ニャー
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あ……ふふ。あなたは、野良さんなの? かわいい。 黒いネコさんは、人懐こいんだよね……。
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ねえ、ネコさん。私、けっこうがんばってたの。 ……本当よ。
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ニャー
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私ね、お父さんがいたの。……弟が生まれてすぐ、 いなくなっちゃったんだけど。
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お父さんがいたころも、お母さんは働いていたけど。 私がすごく小さかったころは、もっと家にいて……。
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でも、お父さんがいなくなってからは……お母さんとも いっしょにいられる時間が減っちゃって……。
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……
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ネコさん。……どうして、 お父さんはいなくなっちゃったのかな。
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お母さんは……私じゃ、 頼りにはならないのかな……。
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……そうか。 それが、志保の本音なんだな……。
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えっ……プロデューサーさん? どうしてここが……。
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志保のお母さんから、 志保が行きそうな場所を聞いたんだよ。
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そう、ですか。母が……。
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志保。これは俺が考えた事だから、志保のお母さんの 考えとは、違うかもしれないんだけど……。
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! ……はい。
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志保のお母さんは、志保のことを、 頼りにしちゃいけないと思ってるんじゃないかな?
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頼りにしちゃいけない? ……そんな。どうしてですか。
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うん。……お母さんが、志保のお母さんで、 志保が、お母さんの子どもだからかな。
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子どもは、大人……それも大好きな人に頼られると、 無理をしてでも、頑張ってしまうものだから。
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……。
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それでも、志保が家族のためを思ってしている事は、 とてもありがたいと思ってるはずだよ。
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何かあった時のための備えがある。それがどんなに 心強いか、志保にはまだわからないかもしれないけど。
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それに何より、志保の存在そのものが、 お母さんにとっては支えなんだと思う。
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私の存在……。
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気になる事があるなら、お母さんに聞いてみるといい。 志保のお母さんなら、答えてくれるはずだよ。
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……。
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その後……
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ただいま……あれ。 みんな、まだ残ってたんだな。
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志保……!
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おかえりなさい、志保ちゃん!
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た……ただいま。
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志保おらんかったから、今日はレッスンしときました。 私らだけで全体曲のダンス、終わってもうたわ!
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す、すみません。あの……。
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ミーティングは明日改めてやる事にするとして…… 志保、これは追いつくのが大変そうだな。
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う……そ、そうですね。でも、 レッスンにいなかった私が悪いので……。
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なら志保は、明日1時間早く出てくること! 私と風花とで合わせよ。な?
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私たち、明日の予定はレッスンだけだから。 志保ちゃんも、それでいいかな?
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奈緒さん、風花さん……ありがとうございます。 よろしくお願いします!
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(その後、遅くなったので志保達を家まで送った。 志保、お母さんとちゃんと話せてるだろうか……)
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夜……
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りっくん、やっと寝たわ。熱が下がった途端、 お姉ちゃんお姉ちゃんってはしゃいじゃって。ふふ。
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あ……うん。……。
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あの、お母さん。 私、聞きたいことがあるの。
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あら、なぁに?
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その……ど、どうしていつも、引き出しの 封筒にお金を入れて置いてあるの?
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それはもちろん、お母さんがいない間に、 何かあった時のためによ。
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何かって……。
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お母さんがいない時に、昨日みたいにりっくんの 具合が悪くなったり、志保がケガをしたり……。
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逆に、お母さんに何かあったりしても…… こうして当座のお金があれば、安心でしょう?
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安心……。 だから、私のお給料も使わないの?
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そうよ。志保がせっかくお給料を渡してくれても、 お母さんが仕事を休めないのは、変わらないし……。
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それにね、志保が頑張って稼いだお金だもの! もったいなくて、無駄遣いなんかできないわ。ふふっ。
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今は大丈夫だから、将来のために貯めておくの。 きっと、とっても役に立つわ。ありがたい限りね。
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……プロデューサーさんが、 言ったとおりだった。
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え?
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ううん、なんでもない。……お母さん、あの。 もうひとつ、聞いてほしいことがあるんだけど。
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私、次の公演で、 新しい曲を歌わせてもらうことになったの……。
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