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メインコミュ 第 80 話 公演前 2 / 5 パート

約束の、その先へ

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(定期公演のレッスンは順調に進んでいる。 おかげで俺も、事務仕事が進められそうだな)
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プロデューサー、レッスン終わりました! お先に失礼しますね!
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お疲れさま、紗代子! おっと、帰る前に……。
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青羽さんから、ファンレターを預かってたんだ。 はい、これが紗代子の分だ。
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わぁ、ありがとうございます! ……えっ、こんなにたくさん!?
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ああ。みんなCMの感想を伝えたくて、 公演まで待ちきれなかったみたいだな。
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うれしいな……あの、プロデューサー! ここで読ませてもらっても、いいですか?
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ああ、大丈夫だよ。 俺は溜まった事務仕事をしているだけだから。
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ありがとうございます! それじゃ、さっそく…… あっ、小学生の女の子からみたいです。
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この封筒、もしかして手作りなのかな? すごい! 私のイラストまで描いてくれてる……ふふっ♪
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「CMで紗代子ちゃんが大好きになりました。 絵もかきました。私も勉強がんばります!」……わあ!
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小学生でも、塾へ行く子は多いから……紗代子みたいな お姉さんに応援されて、嬉しかったんだな。
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お姉さん……ふふ、なんだか照れちゃいますね。 あ、こっちにはCMの感想がぎっしり……!
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「受験生です。勉強中に見ると、元気が出ます!」 うれしいけど、勉強に集中できてるのかな? ふふっ。
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「新曲のフル、楽しみです。公演絶対に行きます!」 わぁっ、ありがとう! 新曲、楽しみにしててね♪
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(……紗代子、楽しそうだな。 公演に向けての励みになるなら、何よりだ)
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次が最後ですね。これは……あっ! いつも手紙を送ってくれる、高校生の女の子です♪
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へえ、そうなのか? 紗代子のベテランファンは、 CMを見てどう思ったんだろうな。
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はい、気になります。……えっと。「こんにちは、 紗代子ちゃん。ファンのAです」うん、知ってるよ!
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「CMと新曲が決まったって聞いて、すごく嬉しかった です。けど、実際にCMで紗代子ちゃんを見たら……」
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「なんだか、落ち込んでしまいました。私は 紗代子ちゃんと同い年で、受験生です。けど……」
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「私は紗代子ちゃんのファンなのに、紗代子ちゃん みたいに前向きに頑張れない。ごめんなさい」……
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…………。
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プロデューサー……。わ、私……。
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うん……無理して言葉にしなくていい。 すべてを受け止めようとしなくても大丈夫だ。
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は、はい。……あの、プロデューサー。 私のCMが、彼女を追い詰めてしまったんでしょうか?
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理由の中のひとつではあるかもしれないけど…… 励まされている人が大勢いるのも、確かだよ。
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はい……それは、わかっているつもりです。 でも……。
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だって本当の私は、そんなふうに、 前向きなんかじゃないのに……。
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……。
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CMは、そういうお仕事ですから。私も、 自信を持って見えるようにしてました。けど……。
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本当の私は、こんなにも自信がなくて……。 いろんなことを、失敗してばかりで……。
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プロデューサー。もしかして私は、 ファンのみんなを騙してるんじゃないでしょうか?
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そんな事はないよ。それにあのCMは、 そういう仕事だ。紗代子が間違ってるわけじゃない。
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けど! ……みんなは、私があの子との約束のために アイドルになったことを、知らないから……。
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約束……紗代子と幼馴染の子が、 アイドルになろうと交わした約束の事だな。
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はい……。
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それはつまり…… 向き合う時が来たって事じゃないのかな。
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向き合う時……?
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ああ。幼馴染との約束を支えに、紗代子はアイドルに なった。それはとても、素敵な事だと思う。
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そこから、もう一歩踏み込んで考える時が 来たんじゃないのかな。約束の先にあるものを。
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約束の、先……? そんなこと、私…… 考えたこともありませんでした……。
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ああ。だから今が、その時なんだと思う。 アイドルになった紗代子だから、考えられる事なんだ。
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もし、その友達と一緒にアイドルになれたとして。 紗代子がその先、どうしたかったのかだ。
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私が……どうなりたいのか……。 あの子と、アイドルになって…どうしたかったか……。
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私……今まで、あの子との約束を果たすことばかり 考えてました。それだけで、いっぱいいっぱいで……。
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けど……今は……。
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(これは「アイドルになる事」が目標だった紗代子が、 初めてぶつかる種類の壁なのかもしれない……)
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(けど、いつかは必ず向き合う問題だ。 ……今は、紗代子が出す答えを待とう)
50
翌日――
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うん、ステップはみんなバッチリね! じゃあ次は……紗代子ちゃん?
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えっ? ……あっ、すみません! え、えっと、えっと……?
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このみさん、朝からずっとレッスンしてますし、 いったん休憩にしませんか? 紗代子ちゃんも。
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いえ、大丈夫です! 私、まだやれます!
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う~ん? けど紗代子ちゃん、なんだかとっても 調子が悪そうだよ? 元気がないし……。
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えっ!? そ、そんなことは……たしかに、 上の空のときもあったかもしれません。でも……!
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紗代子が、とにかくがんばろうって思ってるのは、 よく伝わってくるよ。けど……。
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もしも、何か心配ごとがあるなら話してほしいな。 仲間なんだから。
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仲間…… で、でも。せっかくレッスンの時間なのに……。
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レッスンの時間だからこそ、だよ! 紗代子ちゃん!
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もし、それがアイドルとしての悩みなら……アイドルの 私たちにしかわからないことも、あるんじゃないかな?
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アイドルにしか、わからない悩み……。
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それなら、私にも聞いてほしいな~。 あっ、役に立てるかどうかはわからないけど!
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麗花さん……ふふっ。 みなさん、ありがとうございます!
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実は私、わからなくなってしまったんです。私は 小さいころからずっと、アイドルになりたくて……。
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けど、憧れのアイドルになって……その目標が 果たせたら、その次はどうしたらいいのかなって……。
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「アイドルになりたい」っていう夢が、 叶った後の話かぁ……難しいね。
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そうですね~。私も、ただ歌いたいだけなら、お母さん みたいにオペラ歌手を目指してもよかったのかも?
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えっ! 麗花ちゃんのお母さんって、 オペラ歌手なの!?
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し、知らなかったです……! でも、納得かも……。
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あの、それじゃあどうして麗花さんは、 オペラ歌手じゃなく、アイドルになったんですか?
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そうだね、きっかけは……どうしてだったのかな? でも私、アイドルになって、毎日とっても楽しいよ♪
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私も、最初のきっかけは舞台への…… ううん、アイドルへの憧れだったかな。
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琴葉さんも……あの、春香さんとこのみさんは、 どうしてアイドルに?
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私は、紗代子ちゃんと似てるかな。ずっと、 アイドルが大好き!って気持ちがあったから……。
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まっすぐで、まぶしい動機だと思うわ! 私なんて、 そもそもアイドルなんて考えたこともなかったから。
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ええっ、そうだったんですか!? じゃあどうして……?
78
事務員として面接を受けたはずなんだけど、 プロデューサーにスカウトされちゃって。
79
でも今は、せっかくアイドルになったからには、 最高の景色を見てみたい! ……なんて、贅沢よね。
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そんな……とっても素敵です! このみさんの目標、私も、見習いたいです!
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歌が上手とか、ダンスが上手とかもあるけど…… 私、アイドルの魅力って、それだけじゃないと思うな。
82
そうだな~。アイドルって、勇気をくれますよね! ……あっ、だからアイドルだったのかも?
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勇気……。
84
うん。仲間としても、見ている側としても…… アイドルって、私たちに勇気をくれる存在だと思う。
85
小さかったころも、アイドルになってからも…… アイドルが……私に、勇気をくれる……。
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あっ、あの! みなさん、ありがとうございました!  私……なんだか、やれそうな気がしてきました!
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よかった。 紗代子ならきっと、見つけられるよ。
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はいっ!
89
定期公演当日――
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(いよいよ、紗代子の新曲披露だ。紗代子、 ギリギリまで悩んでいたけど、はたして……)
91
プロデューサー! 私、わかりました! 私が、どうしてアイドルに憧れたのか……。
92
どうして、アイドルになりたかったのか…… アイドルになって、どうしたかったのか!
93
! ……そうか。その答えは、 ステージで見せてもらえるみたいだな?
94
はいっ! プロデューサー、いってきます!
95
(晴れ晴れとした笑顔と力強い足取り。 今の紗代子なら、きっと……!)
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