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(次の公演に向けて、レッスンが始まった。エレナは
新曲をお披露目するだけあって、張り切っているな)
2
みんな、お疲れさま!
そろそろ休憩にしようか。
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ふぅ……エレナはさすがですわね。
ダンスがもう完璧ですもの。
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年上の男性に恋してて、妹にしか見てもらえない、
っていう歌詞なんだけど……。
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自分は妹だから、
子ども扱いされるのがイヤだって気持ち、わかるぞ。
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オレも兄ちゃんがいるし、子ども扱いされるのは
絶対ヤだけど、恋とかじゃないしなぁ……う~ん。
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なぁ、千鶴は?
年上を好きになったこと、ある?
9
わ、わたくし!? ええと、せ、セレブ的にはその、
社交界で声をかけていただくことも……!?
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けどプライバシーに関わることですし、口外は
できませんの! よって、ノーコメントですわ!
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そっかー、セレブって大変なんだね。
あ、恵美は? 恵美はどう?
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恵美は友達多いし、恋愛する気持ちとか
なんかわかりそうだよな!
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いや、なんかって!
アタシだって、自分の曲の時は悩んだしさ~。
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そういえばメグミ、すっごく悩んでたよネ。
友情の好きと恋愛の好きは、どう違うのかって。
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ワタシはあの時、「友情はドキドキしないけど、
恋愛はドキドキする」って思ったんだケド……。
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アタシは今回のエレナの曲、ドキドキとか
そういう感じじゃない気がするな~。
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恵美の『フローズン・ワード』は……
たしか、秘めた恋心を感じさせる歌でしたわね。
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対して、エレナの『想いはCarnaval』は、
「想いにきちんと答えてほしい」という曲……。
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千鶴の『恋心マスカレード』は……自分の本当の
気持ちを言えない女の子の曲、ってことなのかな。
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そうだな。同じ『切ない恋愛』の歌でも、みんな
方向性が違う。だから候補に選ばれたんだと思うよ。
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そっか。同じ恋愛の歌でも、曲によって
歌ってる気持ちが違うのか……。たいしたもんだ。
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歌詞の解釈は、恵美が一歩リードしてるみたいだね。
エレナ、千鶴! ここから挽回だぞ!
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ええ! わたくしなりに、恋愛の切なさを表現して
みせますわよ! おーっほっほっほ、ゲホッ、ゴホッ。
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もちろんだヨ! ……でも、ドキドキとは違うのか~。
う~ん、どうすればいいんだろ~?
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恵美、どうかしたのか?
なんだか元気がないみたいだけど……。
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あっ……なんでもない! みんな、そろそろ休憩
終わりだよ~。後半も、しっかりレッスンしないとね!
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(恵美、この前から少し様子が変だな。
レッスンの後、すこし話を聞いてみるか……)
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メグミから、「事務室に来てほしい」って
メールが来たけど、何の用事だろ?
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さっき、元気がないみたいに見えたけど……
もしかして、ワタシには話してくれるのかナ?
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メグミが何か悩んでるなら、答えないと!
ワタシとメグミは、友達だもんネ! ……よーしっ。
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ああ、お疲れさま、エレナ。
今、恵美から相談があって……。
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実はさ、例のネットドラマの挿入歌のことなんだけど。
……アタシ、辞退しようと思ってるんだよね。
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アタシの曲は、別のドラマに出た時、けっこう
話題になったし。だから今回はいいかなって……。
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でも、せっかく候補になってるんだよ?
自分から辞めちゃうなんて、そんなのおかしいヨ!
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メグミ、どうしてそんなコト言うの?
理由を教えてくれなきゃ、納得できないヨ!
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ワタシ、候補に選ばれて……メグミとライバルだって
言われて、すっごくうれしかったのに。
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メグミは違うの?
ワタシとライバルは、イヤ? 勝負したくない?
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アタシは、エレナと勝負なんかしたくない。
……これでいい?
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ま、待って、メグミ!
なんで? ワタシと勝負するの、楽しくないノ?
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楽しい? ……友達と勝負しなきゃいけないのに、
どうして楽しいなんて思えるの?
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ライバルも勝負も、そんな軽いものじゃないでしょ?
エレナは、気楽に考えすぎてるよ……。
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プロデューサー、失礼しますわ……あら?
エレナ、恵美も、どうかしたんですの?
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ど、どうしよう、プロデューサー!
メグミ、怒っちゃったノ? ワタシ……。
55
大丈夫だ、エレナ。恵美の様子は俺が見てくる。
エレナは控え室で待っててくれ。いいな?
57
千鶴さん、すみません。
エレナの事、お願いできますか?
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まあまあ、泣かないでくださいまし、エレナ。いつもの
太陽みたいな笑顔は、どこへいってしまったんですの?
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チヅル……メグミ、どうしちゃったのかナ。
辞退するって、本気なのかナ……。
64
メグミはワタシのコト、嫌いになっちゃった……?
65
何を言っていますの。恵美がエレナを嫌いに
なるなんて、絶対にありえませんわ。
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じゃあ、どうして辞退するなんて言うノ?
ワタシがライバルじゃ、イヤだったのかナ……。
67
仲間だから本気で競い合うって、
プロデューサーは言ってたヨ。なのに……。
68
……もしかしたら恵美には、友達と争いたくない、
何か特別な理由があるのかもしれませんわね。
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争いたくない、トクベツな……理由?
ワタシ、わからないよ……。
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プロデューサー!
メグミは? 大丈夫だった……?
72
ああ、すぐに見つかったよ。
家まで送ってきたから、大丈夫だ。
73
でしたら、一安心ですわね。
ではわたくしはこれで……。
74
あっ……チヅル!
話聞いてくれて、ありがとネ……。
75
千鶴さん、ありがとうございました。
お陰で助かりました。
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どういたしまして。
がんばってくださいましね、エレナ。
79
ううん。ワタシも、メグミが心配だったし……
それよりプロデューサー、メグミは?
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ワタシ、メグミを怒らせちゃったヨ。
嫌われちゃったのかナ……。
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エレナは恵美に、辞退してほしくなかったんだろ?
その気持ちは、間違いじゃないよ。
82
ふたりは仲間であると同時に、競い合う関係でもある。
同じ事務所のアイドルなんだからな。
83
でもメグミとは、ケンカになっちゃった。
ワタシ、メグミの気持ちが知りたいヨ……。
84
そうだな。恵美の気持ちを知りたいなら……
今のエレナの気持ちを伝える事が一番じゃないかな。
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その後は、もしかしたら時間が必要かもしれないけど
……やってみるか?
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恵美は、レッスンルームで待ってる。
俺も同席するけど……。
90
ありがと、プロデューサー。
もしワタシたちがケンカしちゃったら、止めてネ?
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ああ、もちろん。でも、今のエレナと恵美なら、
そうはならないと思うけどな。
94
(ふたりとも、それぞれ真剣なんだ。
だからこそ……)
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メグミ……どうして、辞退するなんて言ったノ?
メグミは、自分の曲が大事じゃないノ?
96
そ、そんなことないよ! アタシだって、自分の曲は
大事だよ。でもそれは、エレナだって同じでしょ?
97
だったらアタシは、勝負なんてしなくていい。
友達が大事にしてるモノを優先したい……。
98
それが、メグミの本当の気持ち……?
でも……ワタシはやっぱり、悔しいヨ。
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一生懸命練習してても、勝てる自信なんてないヨ。
でも、だからワタシ、がんばろうって思ったんだヨ。
102
ワタシは、メグミとライバルでいたいから。
絶対に負けないように、がんばらなくちゃって……。
103
エレナ、そんな風に思ってたんだ……ごめん。
アタシってば、自分のことでいっぱいいっぱいで……。
104
ううん。……ねえ、メグミ。
辞退するって言った理由、話してくれる?
105
えっと……ちょっと、カッコ悪いんだけどね。
昔、仲良かった友達といろいろあってさ。
106
それ以来、仲間と揉めるのが怖いっていうか……。
ごめん、情けないよね。
107
そうだったんだ……知らなかったヨ。
ワタシこそごめんね、メグミ。
108
え、エレナが謝るコトじゃないってば!
……アタシが逃げてただけなんだよね。
109
昨日、プロデューサーにも
怒られちゃったし。にゃはは……。
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うん。『どっちが勝っても負けても、
エレナは恵美の友達で、大切な仲間だろ』……って。
112
真剣にぶつかりあう事は、怖いと思う。……負けて
しまったほうが、相手を恨まないとは限らないしな。
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けど、エレナも恵美も、お互いを信じてる。相手を
リスペクトする気持ちがあれば、逆恨みにはならない。
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プロデューサー……うんっ! ワタシ、負け
たくないけど。でもメグミを恨んだりなんかしないヨ!
115
そうだな。それに恵美も、わかってると思うよ。
逃げて置いていかれるのは、もっとイヤだって。
116
うん……そだね。
エレナ。アタシのコト、まだライバルだと思ってる?
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そんなの、当たり前だヨ! メグミはワタシの
大事な友達で、仲間で……すっごい、ライバルだヨ!
118
うん! ……だったらアタシも、覚悟決める!
エレナと正々堂々、勝負するよ!
120
(エレナのまっすぐな想いが、恵美の不安を溶かした。
きっと大丈夫だ……)