MLTD Archive(β)
メインコミュ 第 97 話 公演前 2 / 5 パート

さよなら、今は。

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(地方公演の打ち合わせに、みんなの レギュラー仕事の調整。目まぐるしい日が続いている)
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(そんな中、定期公演で初披露予定の、 律子の新曲が届いた。急いで届けないとな)
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SE
バタン!
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みんな、お疲れ様……ゲホッ、ゴホッ! す、すまない。走ったら、咳が……ゲホッ。
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プロデューサー? どうしたんですか、そんなに急いで……。
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いや、律子の新曲が届いたから持ってきたんだ……。 聞いてもらおうと思って……ゲホッ、ゲホッ。
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ありがとうございます。 だからって、そんなに慌てて走ってこなくても……。
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うん。でも直接、律子の意見が聞きたかったんだ。 これは次の公演で、律子に歌ってもらう新曲だしな。
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そ、そうですか。 ……。
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ああ。早速だけど、聞いてくれ!
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SE
♪~
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あら……素敵なバラード。いいなー律子ちゃん。 素敵な曲、もらったじゃない!
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真、美しき楽曲です。 律子の歌声にぴったりかと。
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……。
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……律子?
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あの……ラブソング、ですよね。これ。
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そうだな。 ……こういう曲、嫌いか?
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別に、嫌いとかじゃないです。 でも……ううん。
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ただ、こういう……乙女の恋心みたいな曲は、 前にもやってますよね?
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新鮮味がないって事か? でも、 バラードはあまりないと思うし……。
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こういう少し大人っぽい曲で、 アプローチを変えてみようと思ったんだけど。
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律子の曲って、けっこうカワイイのが多いよね! 意外と乙女っぽいっていうか。
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意外とは余計でしょ、響! それに可愛い曲が 多いのは、ラブソングのせいっていうか……。
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律子さんは、可愛いものが好きなんですね~。 ふふふ。
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な、何よ、美也まで……。 もう……この際だから、ついでに聞きますけど!
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プロデューサーって、 私のこと、どう思ってるんですか?
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え? どうって……。
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言葉のままです。いいから、聞かせてください。 でないと、歌えません!
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いや、どうも何も…… 律子は、765プロの大切なアイドルだよ。
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それから仕事の上でも、大切な仲間だ。 今回に限らず、頼りにしてる。同僚っていうか……。
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……。
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律子?
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いえ。……ですよね! そう言われると思ってました。
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……。
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新曲、しっかり歌えるようにがんばります。 大丈夫です、まかせてください!
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さあ、練習練習! がんばりましょうね、みんな!
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……?
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数日後……
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え? レッスンに来てないって……律子が?
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はい~。みんなでやる曲のレッスンは 進んでいるので、問題ないんですけど……。
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ソロ曲がまだなのよね。 律子ちゃん、何か悩んでるみたいで……。
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参考にするって言ってたのに、この前買った本も、 レッスンルームに置きっぱなしだぞ。
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どうして……いや、もしかして俺のせいか……? 律子の希望と、違う曲だったから……。
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そうですね……確かに新曲を受け取った時、 律子嬢は困惑していたように見えましたが……。
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けど、それだけではないのでは。 ……何か他にも、理由がある気がします。
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んもう! 律子ちゃんがしっかりしてるからって、 プロデューサーくんが放っておくからよ!
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どんなにしっかりしてても、 律子ちゃんはまだ19歳の女の子なのよ?
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でも今回のライブは、律子が企画やりたいって 言ったんでしょ? 自分でもそう言ってたし……。
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あ、でも新曲のお披露目は、 ちょっと不安だって言ってたかも。
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そうだったのか……。
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私たちが、話を聞いてあげられればよかったん ですけど……律子さん、どこにいるんでしょう~。
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まだレッスン時間です。律子嬢は必ず 近くにいるかと。……プロデューサー。
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わかった。 ありがとう、みんな。律子を探してみる!
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(律子、そんなに悩んでいたのか…… 忙しさにかまけていたとはいえ、気付けなかった)
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律子、探したぞ。ここにいたんだな。
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……プロデューサー。
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少し、話をしたいんだけど……その前に。 任せきりな事を怒ってるなら、本当にごめん。
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だから、レッスンに来なかったのか?
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別に、怒ってはいませんけど…… それって、理由を言わないとダメですか?
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口にしないと伝わらない事もあるだろ。 もちろん、強制するつもりはないけど……。
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そうですね。 ……でも、下手に言葉にすると、間違えそうで。
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間違える、か。俺も、何か間違えたのかな。 新曲とか……。
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いいえ。新曲、いい歌だと思います。 ……私は、好きです。
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すごく、好きな……曲だから。 私は、どう伝えたらいいのかなって……。
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何日も、ずっと考えて……。
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……。
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プロデューサー、知ってますか? 私の家族……両親って、すごく仲がいいんです。
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一緒に商売をやっているんですけど。 父の起こした事業を、母が支えていて……。
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私は、そんな両親を……ふたりの関係を、 素敵だと思って。内心、憧れているんです……。
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そうか。 ……律子は、家族の事が好きなんだな。
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ええ。……あ、いえ! 私が言いたいのは、そういう事じゃなくて……。
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そうじゃなくて……ただ私は、 仕事のできる人を、その、尊敬するっていうか。
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好き……なんです。 きっと……。
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仕事ができる人への憧れか……その気持ちなら、 俺にもわかるよ、俺は社長を尊敬しているし。
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そうですよね? そうなんですけど……。
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私もいつか、そんなふうになれたらって。 ただ、そう考えていただけなのに……。
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律子……?
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こんなのがそう呼べるのか、わからないですけど。 ぐちゃぐちゃだし、うまく言えないけど、でも……。
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私は、……その人に、相応しい存在になりたいんです。 仕事相手としても……その、パートナーとしても。
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……だ、だから! 私に歌わせたいなら、私のこと、 プロデューサーに知っててほしくて!
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私が何を考えているかとか、どう不安なのかとか…… ただ、聞いて……分け合ってほしかったんです。
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俺は……律子の事を、わかってるつもりだった。
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つもりじゃ、ダメなんですよ。
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そうだな、そのとおりだ。 ……不安にさせてしまって、本当にすまなかった。
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今からでも遅くないなら、いくらでも…… 話を聞かせて欲しい。それと。
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え?
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いつか、伝わるといいな。 その……律子が言う、その人に。
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……ふふっ。そうですね。 ふふ、あははっ。
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り、律子?
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いいえ。……そう、本当にね。 伝わるといいんですけど、いつになるやら。
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それが律子の本当の気持ちなら、きっと伝わるよ。 俺も、律子の話が聞けてよかったしな。
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……プロデューサー。
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よし。じゃあ、私もそろそろ行きますか。 公演のみんなに、新曲の方針、伝えなきゃ。
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ああ。頼んだぞ!
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(プロデューサーが、アイドルの不安を請け負うのは 当然……今回は、律子に甘えすぎてしまったな)
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(少し遅くなったけど、律子とたくさん話をしよう。 この先、ずっと……共に歩き続けるためにも)
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