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メインコミュ 第 117 話 公演前 2 / 5 パート

ひとひらの花びら

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音楽フェス『ミリ音』当日……
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もうすぐ本番ですわね。レッスンの成果をしっかり 出せるよう……って、百合子。どうしたんですの?
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そ、その……。想像以上にお客さんがいて、 き、急に緊張してきたといいますか~。
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大丈夫ですか、百合子さん……。 あ、そうだ。お水飲んだら、落ち着くかも!
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じ、実はもうたっぷり飲んでみたんです! でも全然、ドキドキが止まらなくって……!
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……。 百合子、少し手を……、よろしいですか?
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ギュッ
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あっ……た、貴音さん……! あたたかい……。あと、いい匂い……♪
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人の温もりを感じると、不思議と落ち着くものです。 ……いかがですか?
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は、はい……ありがとうございます、大丈夫そうです。 別の意味でドキドキしてきましたけど……!
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わぁ、よかったですね、百合子さん! えへへっ、貴音さん、魔法使いみたいかも!
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ホンマやな! ……ってことで千鶴、やよい。 実は私も緊張してきて……手、握ってくれへん?
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ふふっ、もちろん構いませんわよ。いっそ皆で 輪になって、気持ちを一つにして本番を迎えましょう!
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そして……
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ワアアアアァァァァァーーーーッ!
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………………
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みんな、お疲れ様! やっぱりステージには間に合わ なかったけど……バッチリ盛り上がったみたいだな!
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えへへ、任せてください♪ ちょっと歌う前に 緊張したぐらいで、まあまあ完ぺきでした♪
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でも、スタッフさんに聞いたけど…… ステージでは機材トラブルも起こったんだって?
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そうなんですっ。せっかく緊張を乗り越えてステージに 立ったのに、曲の音が出なくて……!
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でも貴音さんがすぐ「しばしとーくを楽しみましょう」 って言ってくれたから、大丈夫でした!
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話題もあれこれと出してくれて、話も弾みましたわね。 ……つけ麺屋ゴン太夫、いつか必ず伺いますわ♪
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なるほど……本当に話が弾んだみたいですね。
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それに本番前にも、皆を落ち着かせてくれましたし。 今日は最初から最後まで、貴音に助けられました。
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そのようなこと……。とらぶるを乗り越えられたのは、 ここにいる全員の力があったからこそ。
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でも、その力を引き出してくれたのは貴音さんです。 それでいて、音が出た後は歌で会場を魅了して……。
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はあ~♪ エミリーちゃんじゃないけど、 やっぱり憧れちゃうなぁ~!
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ホンマやなぁ。めっちゃ美人で物知りで、歌はもちろん トークも地味にうまくて、実は可愛いとこもあって……
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なんや貴音って、アイドルになるために 生まれてきたみたいやんな!
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アイドルになるために……。 私が、ですか?
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うん、ボーン・トゥー・ビー・アイドル! みたいな?
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そうですか……。アイドルになるために。 ……私は、そのようにも見えるのですね。
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(貴音……?)
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数日後……
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(もうすぐ今日の公演が始まる。リハは順調に 終わったものの、出演予定だった貴音は……)
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プロデューサーさん。 貴音さん、今日も帰ってこないんですか?
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急に京都に行く~いうてホンマに行ってから、 もう一週間ぐらい経つんと違います?
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ちょうど一週間かな。久しぶりだし、 向こうでゆっくりしてるんだと思う。
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急に休むことになったから、カバーするのは 大変かもしれないけど、よろしく頼むぞ!
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そんなの全然平気ですー。でも、3日くらいかなーって 思ってたのに、こんなにお休みするなんて……。
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私、『ミリ音』で余計なコト言うてしもたんかなぁ? なんや、あの時から様子おかしかったし……。
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何か事情があるのかもしれませんけれど。 プロデューサーは、何か聞いていますの?
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いえ、スケジュールはいろいろ調整しましたが…… 特に休む理由は聞いていませんね。
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でも、もうすぐ貴音さんの定期公演ですよね? いろいろ準備もあると思うんですけど……。
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プロデューサー、貴音さん、 公演までにちゃんと帰ってきてくれますよね?
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もちろん、帰ってくる……と、思う。
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ええっ~!? 思うだけですか~!?
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定期公演前……。だからこそ、なのでしょうか。 何か思う所でも……。
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……貴音は「一週間ほど」とは言ってたんですよ。 だから、本当に帰ってくるとは思います。
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でも……そうですね。
選択肢
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明日、ちょっと行ってみます。 ……貴音を迎えに。
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―翌日―
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(貴音と連絡を取って、現地で待ち合わせをした。 貴音は……)
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プロデューサー……。 本当に、来てくださったのですね……。
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いえ、それよりも……申し訳ありませんでした。 この度は、とんだご足労をおかけしてしまい……。
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本当はもう少し、そっとしておきたかったんだけど。 でも、みんなも心配してたから。それに……。
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もし貴音が、何かの整理をしていたのなら……。 その場所にいる貴音と、会っておきたかったんだ。
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……お見通しなのですね。でも、何も仰らないで。 本当に、いけずなお方です。
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皆にも心配をかけてしまいました。後ほどめーるを 出しておきます。これから戻ります、と……。
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……心の整理は、できたってことかな?
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さて……どうなのでしょう。 答えにたどり着けたのかは、よくわかりません。
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私は、自分を見つめ直すために戻ってまいりました。 初心に返り、己の望む道を、もう一度見出すために。
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アイドルである私を、皆ほめてくれます。 私自身、納得のいく舞台ができているように思います。
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ただ、それが何故なのか……。 アイドルであることに、私は何を望んでいるのか……。
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それを探しにきたんだな。 それで……見つかった?
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……ふふっ。いいえ。 何も見つかりませんでした。
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目的もなく、寄る辺もなく。ただ風に舞う花びらの ように世界をさ迷っている、今の私には……。
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たどり着きたい場所など、どこにもないのです。 この身にある望みは、ただひとつ……。
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私は、アイドルでいたい。この世界、大切な仲間達、 それから……あなた様の、そばにいるために。
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そうか……わかった。じゃあ、早く戻ろうか! この世界と、貴音の大切な人たちと、繋がるために!
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はい、荷物もまとめて持ってきています。 では早速、駅に向かいましょう!
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えっ? 思った以上に準備がいいけど…… 最初から今日帰るつもりだったのか?
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はっ……申し訳ありません。 実は、不謹慎なのですが……願掛けをしておりました。
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えっ? 願掛け……?
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はい。あなた様が、会いに来てくださるかどうか。 そして、来てくださった、その時は……。
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何をおいても、すぐに帰ろうと。 ひとひらの花びらとして、あなた様の……手の中に。
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