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悪いな、わざわざ来てもらって。
オーディション選考用の書類が届いたんだ。
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ああ、書類選考を通った応募者だ。実技審査の前に
ひととおり目を通しておいてくれ。取扱いは厳重にな。
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はーい! どれどれ~? ……うわ、可愛い!
みんなフレッシュだな。この子とかメイク映えしそう!
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この子たち、ひょっとしたら将来、アタシたちと一緒に
お仕事するかもしれないんだよね。そっかー……
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あれ? ……ううん、やっぱり。
………………。
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……あのさ、プロデューサー。その……。
えっと……。
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なんかごめんね、プロデューサー。
気、使わせちゃって。
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いや、何かこみいった話みたいだったから。
それで、どうしたんだ?
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あの……。前にさ、話したことあったの覚えてる?
アタシがここに来て、初めて公演した後。
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えっと……。
もともと芸能界に憧れてたって子だっけ。確か……。
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一番に、その子に話したんだ。読モみたいに、応援して
くれるかなって思ってたんだけど……言われちゃった。
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「アイドルなんて、今まで興味なかったくせに!」
……って。
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……確か、アイドルになってからは
疎遠になってしまったって。
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うん。芽衣っていうんだけど……その子がね、いたの。
このオーディションに応募してる。
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! そうだったのか……。
本当にアイドルを目指し始めたんだな。
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アタシ……。
芽衣を審査するってことだよね。
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もし難しければ、今からでも断るから。
事情が事情だし、それに……。
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ううん、やらないと……お仕事だもん。
アタシのために、用意してくれた……。
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うん……大丈夫、できる。
アタシ、ちゃんとやるよ、プロデューサー。
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……わかった。当日は俺も付き添うから、
何かあったらすぐに言ってくれ。……それでいいか?
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(もうずっと会ってないけど、元気だったかな。
写真だと、少しあか抜けてた)
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(アタシのこと、今はどう思ってるんだろ……アタシが
審査員って知ってる? わかったらどんな顔するの?)
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12番、沢野芽衣です。よろしくお願いします!
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いや~。なんか、オーディションってすごいね?
自分が受けるより緊張したかも。ていうか、疲れた~!
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ずっと集中して、歌やダンスを見なくちゃいけないん
だもの。神経がすり減ってしまうわよね。
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この後は、審査員それぞれの評価を持ち寄って、
話し合って合格者を決めるのね。
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まだ時間はあるみたいだから、ひと息入れましょうか。
今、お茶を淹れるわね。
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アリガト! まあ、だいたいの評価はつけてたから、
あとは見直すくらいなんだけどね。
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でもノド乾いちゃったから超うれしい。にゃはは!
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(芽衣は……正直、まだまだって感じだった。
すごい頑張ってたけど……)
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(他の審査員の人達はどう思ったのかな。アタシだけ
点数低かったら、アタシのせいで……不合格に?)
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(せっかく本気で夢に向かって踏み出したのに。
アタシ、芽衣の友達なのに。だったら……!)
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(だったら……どうするの?
芽衣がアタシだったらどうしてた?)
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紗代子……みんな。
……あのね。じつはさ……。
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お友達の審査……難しいわね。
どうしても応援したくなるだろうし……。
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そ、そうだよね? それに、これから伸びるのかもだし
今日は調子悪かっただけってこともあるし!
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……確かに、アイドルの審査に必要なのは、
今の実力だけじゃないと思う。
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可能性や雰囲気……。
そういうのも含めてじゃないかしら。
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可能性とか、雰囲気とか……。
そ、そんなの、あるとかないとか……わかんないよね?
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わからなかったのなら、それも含めて。
恵美が一番納得できる答えを出すのがいいと思う。
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……そうね。大切なのは、恵美ちゃんがどう思って、
どうする自分でいたいか……だと思うわ。
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所さんのお友達だったのなら、その方はきっと、
いつもの所さんが好きだったんじゃないかしら。
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いつもの恵美ちゃんは、思ったことをそのままぶつけて
くれる……。だから、うれしいんだよ?
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……ウソのないまっすぐな気持ちで通じ合えるからこそ
『お友達』は大事で、ありがたいのよね♪
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あはは、なんか厳しいけど……。
うん、そうだよね。ありがと!
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じゃあアタシ、今の評価でまとめちゃうね。
そうだよね。答えはもう……出てたんだもん。
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(その後の最終評価で、恵美の友達は不合格となった)
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わーっ、ゴメンプロデューサー!
レッスン遅れちゃって! すぐ準備するから!
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いや、連絡くれてたから大丈夫だけど……珍しいな。
トラブルでもあったのか?
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ううん、じつは芽衣から連絡があって。
それで、さっきまで話してたの。
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芽衣? オーディションに出てた友達の?
……大丈夫だったのか?
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うーん、やっぱり……ぎこちなかった。
オーディション落ちたの、まだ引きずってたし。
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でもね、ぜんぜん怒ってなかった。ただ普通に聞かれ
たんだよね。アイドルとして、どうだった?って。
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正直に。感じたことを言ったよ。
そしたら「そっか」って、言ってた。
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それで……アタシの審査なら、信じられるって。
アイドルのアタシのこと、見てきたからって。
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あの子……
ずっと見ててくれたの。アタシのこと……。
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うん。すごいよね。ホントならアタシなんて、
見たくなかったはずなのに。
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今日はありがとね。
これからもさ、ぜったい頑張って。
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プロデューサー、前に言ってくれたよね。
わかってもらうには、アイドルを頑張るしかないって。
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それでもわかってもらえなかったら?って、
アタシ、ホントはちょっと思ってた。
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でも、見てもらえてたんだ。
プロデューサーの言ったとおりだったね。
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それは、恵美が本当に頑張ったからだよ。
あと、その友達が強い人だったからだと思う。
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うん……。アタシ、やっぱ人に恵まれてるよね!
劇場のみんなもいい子たちばっかだし。
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そう思ってもらえてるなら、よかったよ。
何しろ、恵美を劇場に連れてきたのは俺だから。
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だよね~。うん、連れてきてもらえてよかった♪
アタシ、これからも もっともっと頑張んなきゃ。
102
公演もライブも、他のお仕事も!
これからも、ばんばん入れてくれていいからね!
104
うん! やるぞ~!
ちゃんと見ててくれてる人もたくさんいるし。
105
宣伝のおかげで、前評判もいいみたいだぞ。
ファンも楽しみにしてくれてる。
106
ホントに? よーし、もう絶対すごいライブにする!
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……あ、ところでさ。プロデューサー、
前にもうひとつ、言ってくれてたこと、覚えてる?