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メインコミュ 第 156 話 公演前 2 / 5 パート

完璧な『私』

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(レッスン初日。今日のレッスンは、 律子がAIを使って組み立てたメニューだ)
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質の高いパフォーマンスを維持するには、スタミナが 必須よ。そして体力作りに効果的なのは、有酸素運動!
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それでランニングなんやな。 よっしゃ! やったるで~!
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はぁ……はぁ……。 今日は日差しが強いわね……。
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は、はい……。 律子さん、こ、この後のメニューは……?
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次は筋トレね! スクワットと腹筋をして、 それからダンスの基礎レッスンをする予定よ。
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盛りだくさんですね~。律子さんのAIは、 ハードなレッスンがお好きなんでしょうか~?
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AI的には、スタミナのなさを私達の弱点と判断したの かしら? ふむ……意外だけど、興味深いわね。
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はぁ、はぁ……みんな、お疲れさま……。 これで、今日のメニューは終了よ……はぁ……。
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はぁ……はぁ……。暑いのもあるけど、 AIのレッスンメニュー、けっこうキツイなぁ……。
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わ、私も……さっきから、あ、汗が止まらなくて……。 最後、決めるところも……し、失敗しちゃったし……。
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息が上がってるせいか、動きがぶれちゃったわね。 律子さんも疲れてるみたいですけど、大丈夫ですか?
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アイドルは体力勝負とは言えど、無理は禁物ですよ~。 無理と頑張りは違いますからね~。
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そうね……。これは、私がメニューを作る時、 気温を考慮するのを忘れてたせいだと思うわ……。
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AIに、気温や天候も条件として追加しておかないと。 ……これでよし、と。
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どうせなら、レッスンもAIが代わりに やってくれたらええのにな~。
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で、でも……。その場合、ステージに立つのは…… 私達じゃなくて、AIなんじゃ……?
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あら、本当……その場合は、 AIがアイドルってことになるのかしら……?
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いつかは私達アイドルではなく、 AIがライブをやる日が来るのかもしれませんね~。
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AIが、私達の代わりに……? ふむ……。
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そして…………
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うーん……。私は、アイドルをやってはいるけど、 自分にものすごく自信があるタイプでもないし……。
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でも、AIなら……。もしかしたら、理想の姿…… 完璧なアイドルとしての『私』が見られるかも……?
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……うん、試してみる価値はありそうね。 そうと決まれば、さっそく……!
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コンコン、ガチャ
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プロデューサー、お疲れさまです。 今、ちょっといいですか?
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あ、律子。 大丈夫だけど、どうかしたのか?
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次の公演のことなんですけど……。私本人じゃなくて、 AI秋月律子のライブにする、というのはどうですか?
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……? AIの律子のライブ?
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それは、流石に無理な話だろ。
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まあまあ、そんな渋い反応せず! まずは、私の方で、『私』を学習させてみますから。
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その後で、実用性があるかどうか見てください。 それを踏まえて、改めてご判断いただくってことで。
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見るだけでいいなら構わないけど……。 けど律子、本気なのか?
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はい! 見ててください、プロデューサー。 最高の『秋月律子』をご覧に入れてみせますから!
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その日の夜…………
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歌とダンスはひととおり学習させたし、 MCの動画データも……読み取り完了、と。
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じゃあ、さっそく会話してみましょうか。 AI律子、調子はどう?
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……【絶好調よ! シミュレーションは完璧だし、 コンディションもバッチリ! 任せなさい!】
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うーん……。口調はまあまあだけど、回答の精度は いまいちね。もっとデータが必要かも……』
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【そうね。AIの回答精度を決める最も大事な要素は どんなデータを使うかよ!】
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【どれだけ優れたAIモデルを使っても、 データの質が悪ければ、AIの性能は低くなるわ】
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ふふっ。自分の声で答えが返ってくるって、変な感じ。 でも、面白いわね。覚えさせた分、結果は出るし……。
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さあ、この調子でどんどん 『秋月律子』を学習してもらうわよ?
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【ええ、任せて! 『律子』!】
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数日後……
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【プロデューサー、またネクタイが曲がって ますよ。あーもう、直してあげますから、動かないで】
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【忙しいのはわかりますけど、身だしなみは キチンとしないとダメですよ? まったくもう……】
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す、すごい……。 い、今の……AIが、しゃべってたんですよね……?
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話し方もそうですけど…… 表情や仕草が、律子さんにそっくりですね~。
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本当……。本物の律子さんみたいで、 びっくりしちゃったわ。
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ふふっ、でしょう? ここまでのレベルに育てるには 手間も時間もかかったけど、かなりの自信作よ!
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でも……。
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……? 律子さん~?
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あ、ううん、なんでもないの。それじゃ私、 このAIをプロデューサーに見せてくるわね。
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え、プロデューサーさんに? なんで?
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あれ、言ってなかった? 今回は私じゃなく、 AIにライブしてもらおうかと思って。
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え~~~っ!? 律子やなくて、AIがライブ!!?
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律子さん、流石にそれは……。
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でも、みんな聞いたでしょう? このAI、完璧なのよ!
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だったら公演のステージも、 完璧な『秋月律子』にやってもらった方が良くない?
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完璧な律子さん……。 でも、本当にそうなのかしら……?
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あ、あの……。律子さん……こ、この話、 プロデューサーさんには……?
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もちろん、事前に相談済みよ。実用性があるかどうかは これから判断してもらう予定だけど。
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そっか。……なら、後はプロデューサーさんに 任せた方がよさそうやな。
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ええ、そうね……。
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この出来なら、プロデューサーもきっと、 首を縦に振ってくれるはずよ! 見ててちょうだい!
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【みんな、楽しんでくれてるー? まだまだ、こんなもんじゃないわよねー?】
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【それじゃ、私の新しい曲、聴いてください! 秋月律子で、『Discord Area』!】
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……とまあ、こんな感じです! どうですか? プロデューサー!
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ダメだ。
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えっ……ダメって、どうしてですか!!? 歌もダンスも、MCだって完璧なのに!!
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そんな事言われても……お客さん達は劇場に、 『秋月律子』本人に会いに来るわけだから。
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AIがどんなに完璧だったとしても、それが 律子本人じゃなかったら、意味がないんじゃないか?
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それは……。
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お客さん達が心惹かれているのは、 律子自身だと思う。たとえ不完全であっても。
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みんな、律子の輝く姿が見たいんだよ。 それはもちろん、俺も同じだ。
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でも……。それでも私は、 AIの私より、自分の方が完璧だなんて思えません。
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律子……。
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……いったん、この話は置いておこう。 それより、こっちからもひとつ相談があるんだ。
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今回の公演メンバーに、仕事の依頼が来てるんだ。 雑誌のグラビアの仕事で、衣装はこれだそうだ。
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どれどれ……わ! すごく、素敵な衣装ですね。
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うん。律子、グラビアはあまりやりたがらないけど…… 今回の衣装は、絶対似合うと思う。どうだ?
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……えっと……。 すこし、考えさせてもらってもいいですか?
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わかった。それじゃ、来週までに返事を 聞かせてもらえるか? 考えておいてくれ。
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そして……
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グラビアのお仕事かぁ……どうしよう……。 あっ、そうだ! こんな時こそ、AIに相談じゃない?
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ねえ、AI律子。私達公演メンバーに、グラビアの 仕事が来たんだけど、受けた方がいいと思う?
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衣装がね、とっても素敵なの! でも、私はその、そういうの得意じゃないから……。
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【そうね。それは『秋月律子』向きな仕事じゃ ないわ。絶対に、避けるべきよ】
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えっ。で、でも……。
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【得意じゃない仕事に労力を払うくらいなら、 得意な事をやって、高い結果を出すべきでしょう?】
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そ……それは、そう…… かも、しれないけど……。
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【苦手なことをやるのは非効率的だし。 それに、『秋月律子』のファンも喜ばないと思うわ】
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……!
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さっきから、知ったようなことばっかり言って……。 あなたに、私の何が……。
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いいえ! 私のファンのみんなの、何がわかるのよ!
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【律子?】
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……決めた。 『私』は、挑戦するわ。
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【?】
100
今に見てなさい! 必ず、結果を出してみせるんだから!
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