1
(記者会見の後、劇場に戻ってきた。みんなは……
ちょうど、定期公演のレッスンが始まる時間だな)
2
みんな、お疲れさま!
桃子も、レッスンに参加してもいい?
3
桃子ちゃん、お疲れさま!
それはもちろん、大歓迎だけど……大丈夫?
4
記者会見だったんでしょ、どうだった?
今日くらい、休みにしてもいいのよ?
5
今日は記者会見と、取材用の本読みだけだから。
そんなに大変じゃなかったよ。
7
困ったこと……あ。
なんか、ダブル主演の子に、無視されちゃったかも?
9
さあ……? いちおう、挨拶はしたんだけどね。
桃子、あの子とは初対面だと思うんだけど……。
10
も、桃子の挨拶を無視するなんて……!
アタシ、ちょっと文句言ってくる!
11
のり子ちゃんが行くなら、私も!
一緒に行って、「メッ!」てしてくる!
12
ちょっと、のり子さんも麗花さんも落ち着いて!
もう、小さい子じゃないんだから。
13
別に、何かされたわけじゃないんだし。
いきなりそんなことしたら、話がこじれるでしょ。
14
それは、そうかもしれないけど……。もう!
プロデューサーくんたら、何してたのよ~!
16
そう! お兄ちゃんも。桃子が何か言うまで、
手も口も出しちゃダメだからね。
17
ああ、わかってる。
みんなも、少し落ち着こう。
18
本当にダメなことがあったら、桃子はちゃんと
俺やみんなを頼ってくれるはずだ。
19
そういうこと!
お兄ちゃんも、すこしはわかってきたみたいだね♪
20
うぅ……。なんか納得できないけど、
桃子がそう言うなら……。
21
はいはい。そろそろ着替えて、レッスン始めよう?
おしゃべりしてたら、時間が終わっちゃうよ。
22
は~い!
それじゃあみんなで、着替えにゴーゴー♪
25
あ、お兄ちゃん……。
ちょっと、考えごとしてただけだよ。
27
うん。あの子……凛々加さんは、
どうして桃子を無視したのかな?って。
28
これから、いっしょに仕事しなきゃなのに。イヤな
態度をとったら、やりづらくなるのは自分でしょ?
29
そうだな……。もしかしたら凛々加さんは、
桃子を、脅威に感じたのかもしれないな。
30
脅威?
……それって、桃子がこわいってこと?
31
凛々加さんの事務所は、うちより大手だ。
年齢も、桃子のひとつ上だったかな。
32
でも演技に関して言えば彼女は新人で、桃子は
ベテランだ。本読みでも当然、差を感じたと思う。
34
ダブル主演である以上、これから彼女は、
常に桃子と比べられる事になる。
35
だから、警戒してたんじゃないかな。ただ桃子の
言うとおり、やりづらくなるのは自分だけど。
36
……。お兄ちゃん。
桃子、どうしたらいいと思う?
37
相手の気持ち次第だからな。桃子は、
いつもどおりの桃子のままでいいと思うよ。
38
それでも何か困る事があったら、言ってくれ。
俺から、演出家さんに掛け合ってみるから。
40
桃子のプロデューサーなんだから、当然だよ。
……主演舞台、絶対成功させような!
43
あっ……凛々加さん、お疲れさま。
今日、いっしょなんだね。
46
(ま、このくらいで、いちいちめげてられないけど。
他の人が来るまで、柔軟でもして待ってようっと)
47
ねえ、これどういう意味か知ってる?
板付きって何? バミ指定……?
48
板付きは、幕が開いた時に、舞台に立ってるように
ってこと。バミは、床に貼ってある目印のテープだよ。
49
あ、ありがとう……!
ごめんね、専門用語全然わからなくて……。
50
舞台とかの言葉って、独特だよね。
知ってることなら、桃子が教えてあげられるよ。
53
ストップ!
そこ、移動が遅いですよ。もっと素早く!
55
先生! その子、足首を痛めてます。
テーピングを強めに巻いてもらってたので。
56
あ、だ、大丈夫だよ!
大したケガじゃないし……。
57
そうなの? ダメでしょ、ちゃんと言わなくちゃ。
無理をするのが、いい稽古じゃないのよ。
59
今のところ、台本読みだけしてみない?
それなら、座ったままできるでしょ。
62
あ、凛々加さん。
台本持って、こっちに来て。
66
? だってここ、桃子と凛々加さんが
初めて舞台に並んで立つ、大事なシーンでしょ。
67
いっしょに台本読んでおくと、流れが頭に入るよ。
そのほうが楽だから。
70
迎えに来るっていったのに、お兄ちゃん遅いな……。
しょうがない、台本でも読んで……あれ?
72
凛々加さん?
今日は、稽古お休みだって聞いたけど……。
73
……ねえ。
あなた、どうして私に話しかけるの?
74
私たち、ダブル主演でしょ。
事務所も違うし、ライバルなんだよ。
77
今までの桃子だったら、話しかけなかったかも。
えっと……凛々加さん。
79
ライバルだと、いっしょに稽古したりとか……
あんまり、仲良くしないほうがいいのかな?
81
私、自分のグループの子ともそんなに話さないし。
事務所は同じだけど、みんなライバルだから……。
82
そうなんだ。……じゃあ765プロって、
やっぱりすごく変わってるのかも。
83
みんなライバルだし、勝負で手を抜いたりしないけど。
でもそれ以外は、仲良くしてるから。
86
……そっちばっかり、ズルい。
私だって、そういうのがいいのに……。
87
うーん、そうだよね。
でも、仲間を交換なんてできないし……。
89
みんなだったら、きっとひとりになんてさせないから。
だから桃子も、凛々加さんに挨拶するし声も掛けるよ。
91
いいよ。あと『そっち』じゃなくて、周防桃子。
よろしくね、凛々加さん。
94
(桃子を迎えにきたけど……
もうすこし、時間を潰してきた方がよさそうだな)
96
桃子はああ言ってたけど……今回の舞台って、
765プロのメンバー誰もいないでしょ?
97
桃子はお芝居に真剣だから、何があっても投げ出さない
だろうけど。頼れる人がそばにいないのは……ううっ。
98
そうなのよね~。桃子ちゃんは大人っぽいけど、
大人じゃないもの……ああ、心配だわ……。
99
みんな、少し心配しすぎじゃないか?
逆に、桃子はそういうのを気にすると思うけど……。
100
確かに……。自分のせいでレッスンが遅れてるかも、
なんて聞いたら、桃子ちゃん……。
101
高~い踏み台に乗って、みんなに、
ぷんぷん!!ってしちゃうかも?
102
まぁ、みんなの心配もわかるよ。
という訳だから、見学に行かないか?
104
本番前日に、ゲネプロ公演があるんだ。桃子が
みんなを連れて来ていいって言ってたから。
107
みんな、お疲れ様!
それじゃ、桃子の舞台のゲネプロを観に……。
109
す、すまない……って、あれ?
時間まで、まだだいぶ余裕があるような……?
110
まぁ桃子は早めに入らなくちゃだし、いいか。
……よし、それじゃ出発だ!
112
桃子が……うちの桃子が……グスッ。
ていうか、すっごく良かったよね……!?
113
ええ! とっても素晴らしかったわ!
頑張ったのね、桃子ちゃん……グスッ。
114
お話も、すごく面白かったね。
公演が始まったら、話題になりそう……!
115
ダブル主演の凛々加ちゃんも、良かったよね?
桃子ちゃんのお芝居に、食らいついてた気がします!
116
ああ、見事だったな。演技初心者なのに
桃子が相手で、プレッシャーもあっただろうに。
117
彼女の演技を、桃子がうまく引き立ててたと思う。
しかしこれは……予想外というか、脱帽だな……。
118
桃子ちゃん……! 自分のことを無視した相手なのに、
そんなふうに気を配って! 本当にすごいわ……!
119
そうだよ、莉緒姉!
うちの桃子はすごいんだよ……! グスッ。
120
泣いちゃダメだよ、のり子ちゃん。せっかくの
桃子ちゃんの晴れ舞台なんだから、笑って笑って♪
121
こんなに、素敵な舞台を見せてもらったんだもん。
今度は私たちが、全力でサポートしないと、ですね♪
122
そうだな。みんな、定期公演も
よろしく頼んだ!