(ついに琴葉が初めて劇場のステージに立つ日。 もうすぐ出番だが、琴葉の様子は……)
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(ついに琴葉が初めて劇場のステージに立つ日。
もうすぐ出番だが、琴葉の様子は……)
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あ、プロデューサー、よかったです。
念のため、確認しておきたいことがあって。
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ああ、かまわないけど……本番直前だっていうのに、
ずいぶん落ち着いてるんだな。
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ふふ、ありがとうございます。
これでも一応、演劇部ですから。
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ここまで来たら、もう覚悟を決めるしかない……
ということは、知ってるつもりです。
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なるほど、頼もしいな。
それで確認したいことって?
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はい。舞台に向かう心得はともかくとして……
アイドルとしての心得を、聞いておきたくて。
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ダンスは演技、歌は台本と思えば、
舞台に上がることは怖くありません。ただ……
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もしアイドルにはアイドルの心得があるなら、
それは聞いておかないと、と思って。
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(なるほど。演劇の舞台とは違う、
アイドルの舞台に臨む上での心得か……)
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よし。それじゃ、その琴葉の強みでもある
演劇の舞台に上がった経験。それを……。
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えっ? 忘れるって……、ええっ!?
ど、どうしてそんなことを?
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たしかに、舞台に上ったアイドルが披露するのは、
ダンスという演技、歌という台詞だ。
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でも、アイドルがファンに届けなきゃいけない
一番大事なものは、そういう技術じゃないと思う。
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アイドルがファンに届けなきゃいけない、
一番大事なもの……ですか?
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田中琴葉、じゃないかな。ファンのみんなは、
琴葉が演じる誰かじゃなく……。
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そう……でした。今日は、私が……
田中琴葉が舞台に立つ姿を、見せないとでしたね……。
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演じている役柄……他の誰かでは、決してなく。
新人アイドルの、田中琴葉として……。
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(ステージパフォーマンスも、当然大事だ。
でもそれは、アイドルにとって手段のひとつ……)
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プロデューサー、ありがとうございます。
アイドルとして、大事なことが、わかった気がします。
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今の言葉は、私の中にしっかりとしまっておきます。
この先もずっと、忘れないように……。
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(そう言って顔を上げ、微笑む琴葉。
その視線はきっと、遥かな未来に向けられて……)
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あ、ノートにも書いておかなくちゃ。
えっと、どこに置いたかな……?