(歩の初公演まで、あと数日。調子はどうかな。 ……ん? あそこにいるのは、歩じゃないか?)
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(歩の初公演まで、あと数日。調子はどうかな。
……ん? あそこにいるのは、歩じゃないか?)
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歩、どうしたんだ?
今は、ボイストレーニング中のはずじゃ……。
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うん、そうなんだけど……
プロデューサー、どうしよう……。
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どうしたんだ、そんな困った顔して。
何か心配なことでもあるのか?
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……実は、さ。
ボイストレーニング、逃げてきちゃったんだ……。
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もうすぐ初ステージだろ? アタシ、ダンスには
自信があるけど、歌はまだ全然……なんだよ。
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悔しいけど、先生に細かくダメ出しされても、
何が悪いのかちっともわからなくて。
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何回やってもできない自分が嫌になって、自信
なくなっちゃってさ……。もう無理だー!って……。
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それで、衝動的に飛び出してきちゃったのか……。
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……ねぇ、プロデューサー!
アタシ、劇場専属ダンサーとかじゃダメかな!?
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それなら、ダンスだけでいいし!
他のみんなに、迷惑かけるコトも……。
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もちろん、歩が望むならそういう道もある。ダンスの
実力は大したものだし、これからもっと伸びるだろう。
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……それじゃ違うって。良くないってコトは、
自分でもわかってるんだ。でも……。
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歩はこれまで、どんな風にダンスを習ってきたんだ?
一番苦しかったのは、どんな時だ?
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ダンスは、色々教わったけど、アメリカのストリートで
教えてもらった時が、一番キツかったかな……。
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一目ぼれだったから、頼み込んで教えてもらったのに、
全然できなくて。……悔しくて、何度も泣いたよ。
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そうか。ダンスが得意な歩でも、
最初からできなかったことは、あるんだな。
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できないからって、あっさりあきらめてたら……
絶対に上手くならないんだ。
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アタシ、歌がうまくならないのが辛くて……
自分の得意なダンスに、逃げ込もうとしてたんだ……。
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歌だって、ダンスの時みたいに必死に努力すれば、
同じくらい上手くなるはず。……そうだよね?
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ああ。ダンスでも歌でも、そうやって少しずつ、
上達していくんだと思う。
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ありがとう、プロデューサー!
やっぱ、プロのアドバイスはすごいな~。
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先生に謝って……もう1回、レッスンしてもらう。
ちゃんと歌えるようになるまで、頑張るよ!
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(トレーニングルームへと駆けていく歩の後ろ姿が、
本番の舞台へと駆けていく背中と重なる……)
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(きっと歩は、最後まで全力で駆け抜けるだろう。
その姿を、見届けよう……!)