(今日はいよいよ歌織さんのアイドル初舞台。 ステージの最終チェック、念入りにしておかないと)
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(今日はいよいよ歌織さんのアイドル初舞台。
ステージの最終チェック、念入りにしておかないと)
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あっ、プロデューサーさん。
よかった、ここにいらしたんですね。
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あ、歌織さん。すみません、初舞台の直前なのに、
一人にしてしまって。
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ふふっ、そんな、気にしないでください。
私も大人ですから、少しくらい一人でも平気です。
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でも、さっきの口ぶりだと、
俺を探していたんじゃないですか?
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はい。実は……プロデューサーさんに、
初舞台に立つ前に、お話ししておきたいことが。
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なんですか? 気になることがあるなら、
どんなことでも聞かせてください。
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ありがとうございます。
プロデューサーさん、私……。
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今、とっても身体が熱くて……。
ふるえているんです。
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はい。私、プロデューサーさんに、
ここまで連れて来ていただいて、気が付きました。
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この胸の高鳴りは、今までとは違う……。
本当に、私のための高鳴りだっていうことに。
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私、ボーカリストとしてのステージは、
幼い頃からたくさん経験してきました。
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でも、プロデューサーさんが、
アイドルの世界の扉を開いてくれて。
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そして、アイドルとしての道を歩き始めて。
劇場の子たちと一緒に、レッスンに明け暮れて……。
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確かに、アイドルとしてのレッスンは、
歌織さんにも目新しかったかもしれませんね。
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はい、ダンスも初めてでしたから、ステージでちゃんと
ステップが踏めるか、今もすごく緊張しています。
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ファンのみなさんにアイドルらしいアピールができるか
心を掴めるだろうかって……。
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そんな心配をたくさんしているうちに、
やっと気が付いたんです。……笑わないでくださいね?
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私は今日、初めて……。自分の夢を
かなえるためにステージに立つんだって……!
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はい♪ 私、はしたないかもしれませんけど……。
アイドルになってすぐに、欲が出て来ちゃいました。
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もっと輝きたい。アイドルとして輝きたい。
トップアイドルになりたいって!
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歌は物心つく前から、ずっと好きでした。でも、それは
夢のためでも、どこかに進むためでもなかったんです。
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ただ、歌っていられれば満足でした。
歌って、ほめてもらえて……。それで、おしまい。
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でも、今日は違います。私は、自分のなりたいものの
ために、ステージに立つんです!
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ありがとうございます、プロデューサーさん。
私を、新しい世界に連れてきてくれて……。
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まだまだこれからですよ、歌織さん。
新しい世界は、この先の遥か彼方まで続いています。
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一緒に飛び立ちましょう。
広い大空の彼方まで、一緒に!
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ふふっ、もう。本番前に、あんまり担当アイドルを
ドキドキさせるようなこと、言わないでください……。
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あ、すみません!
かえってプレッシャーでしたか?
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いいえ、ますます楽しみになってしまいました♪
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プロデューサーさん。
しっかり、見ていてください。私は……。
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歌織は、飛び立ちます。貴方が誘ってくれた、
私の……新しい夢に向かって!
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(そう言い残して、歌織さんは
ステージのライトの中へ消えていく)
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(今から始まるステージは、俺が初めて歌織さんの歌を
聞いたあの舞台を超えるステージになるに違いない!)