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(PV撮影の休憩時間。千鶴さんがふらりと
姿を消したので、後を追ってみることにした……)
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あら、プロデューサー……。
もしかして、もうそろそろ撮影開始でしたかしら?
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いや、まだです。ただ、何処に行くのか気になった
だけで……お邪魔だったら、すみません。
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いえ、そんなことは……別になんでもありませんわ。
なんとなく月が見たくなっただけです。
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なんとなくですか。
まあ、わかります。今夜は月が綺麗に見えますし。
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ええ……思い返してみれば
受験の頃はよくこうして、月を見上げたものでした。
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勉強で、学校からの帰りが遅くなった日などは、
自転……
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そ、そう! 自転する月がよく見えたものですわ!
送迎の車の窓から……お~っほっほっほ!
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え? あ、ええ……確か月って、
自転と公転の速度が、ピッタリ同じらしいですね。
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あ、それは聞き覚えがありますわね。
ですから月は、いつも表側しか見えないのだとか。
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ただ変わらず、そこにあって。
美しく磨かれた面だけを、こちらに見せてくれる。
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わたくしも、あの月のようになれたらと……。
そんなことを考えてしまいますわ。
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あ、いえ! あの月のように美しく……などと、
傲慢なことを言いたいわけではありませんのよ!?
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ただ、わたくしにも、誰にも見せない裏側が、
ないことも、ない……かもしれませんもの!
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本当の姿を隠しながらも、堂々と輝く……。
そんな強さには、憧れてしまいますわね。
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なるほど……さすがですね、千鶴さん!
そこまで役柄に入り込んでいるなんて。
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イメージトレーニング中、という事ですよね?
PVの役柄の……。
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あ……え、ええ! その通りですわ!
偽りの仮面、隠された心に思い悩む貴婦人……。
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かなり掴めてきましたわよ、わたくしの役柄が!
お~っほっほっほっほ、ゲホッコホッ。
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頼もしいですね。何かあれば言ってください。
どんなことでも、協力しますよ!
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まあ、ふふっ……貴方らしい気遣いですのね。
そうですわね、では……。
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もうしばらく、一緒に月を見てくださいませんこと?
イメージトレーニングとして……。