MLTD Archive(β)

セクシーと芝居に近道なし

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お疲れさま、プロデューサーくん♪ 今帰り?
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ああ、お疲れさま莉緒。 莉緒もこれから帰るところか?
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ええ。でも帰る前に、予約してたエステに行くわ。 毎日のお手入れが、お肌を輝かせるの。
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セクシーに近道なし!って、 セクシーの偉大な先輩も言ってたしね♪
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偉大な先輩?
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もちろん、このみ姉さんよ!
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……なるほど。 いろいろと深い……気がするな。
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…………、…………だ……。
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あら? ……ねぇ、何か声が聞こえない? プロデューサーくん。
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声? こんな時間だし、俺達以外に、 劇場に残ってる人なんていないと思うけど……。
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莉緒、俺をからかってるのか?
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そんなんじゃないわよ! ほら、耳をすませてみて……。
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……様……が、…………らだ……。
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!? 本当だ、声が聞こえる……!
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そういえば、劇場でウワサを聞いたことがあるわ。 夜になると声が聞こえてくるんですって……。
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もしかして、この声がそのお化け? それとも、本物のヴァンパイアがここに……?
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いやいや、そんなはずは……。 とにかく、声の正体を調べてみないと。
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えっ、調べに行くの!?
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聞いてしまった以上、放っておくわけにも いかないよ。ちょっと行ってくる。
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ち、ちょっと、プロデューサーくん! 私を置いてかないでよ~!
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声は……レッスン室から聞こえてくるみたいだな。 ……ん? あれは……。
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……貴様らが、ヴァンパイアだからだ。
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ふぅ……なかなか上手くいきませんわね。 もう一度……。
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な~んだ! 声の正体は、千鶴ちゃんだったのね。
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あら、莉緒さん…… それに、プロデューサーも?
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千鶴さんだったんですね。 もう遅い時間だから、誰かと思いましたよ。
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まぁ……わたくしったら、扉を閉め忘れていたのね。 声が漏れてしまったようですわ。
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もしかして、自主練してたんですか? 通し稽古は順調だったのに、どうして……。
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それは……わたくしが、今回の主演だからですわ。 大役である以上、絶対に失敗はできませんもの……。
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だからこうして、自主レッスンをしていたのです。 でも、驚かせてしまって……申し訳ありません。
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気持ちはわかりますけど、ムリは良くないですよ。 今日は、ここまでにしておきましょう。
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いいえ、わたくし、まだ納得できていませんの。 プロデューサー、続けさせてくださいまし!
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……ねぇ、プロデューサーくん? 私も、残って練習したい気分になっちゃったわ。
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ちょっとだけなら、いいでしょ? ね?
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莉緒まで……仕方ないな。 じゃあ、あとちょっとだけってことで。
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ウフフ、ありがと! あ、練習の前にエステの予約、キャンセルしないと。
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え、エステのキャンセル!? いけませんわ、キャンセル料がかかるのでは……!
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大丈夫よ、そんなのないから! それに私だって、 今回の公演、良いものにしたいって思ってるもの♪
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アダルト組として、一緒に頑張りましょう! ねっ、千鶴ちゃん♪
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莉緒さん……ええ、そうですわね。 一緒に、良いものにしましょう! ふふっ。
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(莉緒と千鶴さんは、第三幕の練習中だ。だが……)
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はぁ……どうしたら良いのかしら。 役のイメージが、上手くつかめませんわ……。
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役のイメージ、ですか?
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ええ。わたくしとこのアレクサンドラでは、 生まれも育ちもかけ離れていて……。
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そうですか……。すみません、千鶴さん。
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あら、どうしてプロデューサーが謝りますの?
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いえ、高貴ってことで、セレブと貴族は似ていると 思っていたものですから。俺が浅はかでした……。
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そ、それは、似て非なるものですから、 仕方ありませんわ!
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コホン。それはともかく……。 どうすれば、貴族らしく演じられるのか……。
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貴族らしく、ねぇ……。でも、あんまり 思いつめる必要はないんじゃないの? 千鶴ちゃん。
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莉緒さん。けど……。
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私だって、貴族のことなんてよくわからないけど、 イメージで貴族役を演じているし。
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それに大切なのは、貴族らしく演じること…… じゃなくて、アレクサンドラらしいこと、でしょ?
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あっ……。
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それに、このアレクサンドラって、なんだかすごく いい人そうじゃない? 優しくて、妹思いで……。
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違う時代の人で、貴族であっても……私達と、 そんなに考え方は違わないんじゃないかしら?
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…………。
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ありがとうございます、莉緒さん。 わたくし、目が覚めた気分ですわ……!
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……この役は、わたくしにとって、 とても大切な役なのです。
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アレクサンドラは妹に「お前はヴァンパイアになった」 と、真実を伝えることができずにいる……。
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大切な人に、隠し事をしている苦しさ……。 わたくしには、他人事とは思えないのです。
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アレクサンドラらしさ…… 必ず、表現してみせますわ!
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(その後の練習では、莉緒も千鶴さんも、 鬼気迫る演技を見せてくれた。これならきっと……)
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ウフフ、私達の演技はどうだった? プロデューサーくん♪
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ああ、すごく良かったと思う。 お話だという事を忘れて、見入ってしまったよ。
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……って、ああっ!? もう、こんな時間ですの!? 終電が行ってしまっていますわ……!
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えっ? 千鶴さん、今日は電車なんですか?
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い、いえ! わたくしは大丈夫ですけれど、その…… 莉緒さんやプロデューサーは、電車でしょう?
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ああ、なるほど。でも、大丈夫ですよ! 今日は俺が車で送りますから。
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やった♪ ありがと、プロデューサーくん! ねぇ、千鶴ちゃんも一緒に送ってもらいましょうよ。
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えっ!? わ、わたくしは……。
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千鶴さん、よかったら送らせてください。 高級車じゃなくて、申し訳ないですけど……。
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そ、そんな事気にしませんわ。 ありがとうございます。では、お言葉に甘えて……。
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あ、わたくしは家の近くで降ろしてくださいまし。 ええ、近くまでで結構ですわ。近くまで、で!
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(その後、ふたりを車で送り届けた。深夜までかかって しまったが……有意義なレッスンになって、何よりだ)
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