1
(映画『誰ソ彼ノ淵』の撮影は順調だ。次は、
茜たちが山で逃げるシーンのリハーサルだ……)
2
ハア……ハア……。このまま行けば山頂ね。
茜さん、エレナさん! こっちよ!
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ハア……ハア……!
せ、先生! 私、足が……もう……。
5
ごめんなさい……私が、もっと早く気づいていたら。
ふたりとも、村に着くまでの我慢よ!
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だからそれまで、決して足を止めてはいけないの。
いいわね? そうしなくちゃ……ッ!!
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な、何でもないわ。ふたりは、先に行ってちょうだい。
……振り返っちゃダメよ! お願いだからっ!
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ん? あの木の向こうに、何か見えて……えっ?
あれ、もしかして……。
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はい、カーット!! すみません、島原さん!
悲鳴のとこ、もっと緊張感もらえませんか?
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えっ? ……わ、わかったヨ!
もう1回、お願いしマース!
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ん? あの木の向こうに、何か見えて……えっ?
あれ、もしかして……。キャァァァッ!!!
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(休憩と打ち合わせを挟み、エレナは同じシーンに
挑戦したが、監督は一度も首を縦に振る事はなかった)
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うぅ……アカネ、カオリ、ごめんネ……。
ワタシのせいで、何度もやり直しになっちゃって……。
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気にしないで、エレナちゃん。私も、
たくさんNGを出してしまったことがあるもの。
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ありがと、カオリ。演技ってムズカシイネ……。
怖がるお芝居って、どうしたらできるのカナ?
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そうね……エレナちゃんが、とても怖い経験をしたら、
役の気持ちに近づけるかもしれないけど……。
21
プロデューサーちゃん、
プロデューサーちゃん。
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茜ちゃん、いいアイディアを思いついたよ。
ちょっと耳貸して? あのね……。
24
(茜発案の『エレナの悲鳴が上手くなる大作戦』……。
出番まで待機という指示だが……不安しかないぞ!)
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監督さんが呼んでるって聞いたんだけど……
こんな時間に、なんだろうネ? アカネ。
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さ、さあ? 何の用事かなー?
茜ちゃんも全然、いっこも、心当たりないなー!
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もしかして、昼間のリハーサルでちゃんとお芝居
できなかったから、怒られちゃうのかな? うぅ……。
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よしよし、計画は順調に進行中! さあ、
次はプロデューサーちゃんの出番だ!
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行け、プロデューサーちゃん!
そのレザーマスクをかぶって! 力の限り!!
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(茜、他人事だと思って……まぁいいか。
今はとにかく、エレナのためだ……!)
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んごごごご……んごんご……!
……んごんご!
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あっ! もしかして、アナタがアカネを……!?
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(その調子だよ、プロデューサーちゃん!
エレナちゃんを怖がらせて、悲鳴をあげさせるのだ!)
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(茜ちゃんは! エレナちゃんの成長のため、
心を鬼にしてエレナちゃんを千尋の谷に突き落とす!)
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ひどい……。アカネはどこ?
アカネを返して!!
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アナタなんか……こ、怖くないんだから!
……たああああああっ! そりゃっ!
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ん、んご~~~~!?
んごんーご! んご~!
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ニャ!? ストップ、エレナちゃんストップ!
その人、プロデューサーちゃんだから!
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え、アカネ? ……えっ?
プロデューサー!?
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もう! アカネもプロデューサーもひどいヨ!
ワタシにドッキリを仕掛けるなんて……。
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でも……アカネ、プロデューサー!
怖がってあげなくて、ゴメンネ♪
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うん。まさか、
返り討ちに遭うとは思わなかったよ……。
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だって、プロデューサー
ちっとも怖くなかったヨ? それより……。
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アカネがいなくなっちゃった……って気づいた時が、
ワタシ、今までで一番怖かったかも……。
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アカネを助けられるのはワタシしかいないでしょ?
だから、がんばらなきゃって。
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エレナちゃんに、そんなに心配してもらえるなんて……
ううっ……茜ちゃん、すごい感動だよ!
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当たり前ダヨ!
アカネは、ワタシの大切な友達だからネ♪
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お芝居の役に立ったかどうかはわからないけど……
ふたりの気持ちは、ちゃんと伝わったヨ。
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だから、ありがとー!
ワタシ、明日の撮影がんばるからネ! エヘヘ♪
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(茜の作戦は失敗に終わったけど……
まあ、結果オーライかな?)