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(あの後も、伊織はきちんと挨拶回りをこなしていた。
本人は大丈夫だって言ってたけど……)
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プロデューサー、資料整理終わりましたよ。
……プロデューサー? 聞いてますか?
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え? ……ああ、ありがとう律子。
手伝ってくれて助かったよ。
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いえ。それより、どうかしたんですか?
事務処理にしては、ずいぶん難しい顔してましたけど。
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うん……律子になら話しても大丈夫かな。
実は昨日の挨拶回りで……。
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……なるほど。さすがの伊織でも、
それは堪えたでしょうね。
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ああ。これが悪意なら、逆にそれを
モチベーションに変える事もできるけど……。
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今回はそういう訳じゃない。
だからこそ、伊織としては余計に気になるだろうな。
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プライドを傷付けられたでしょうね。
一番言われたくないところでしょうし……。
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そうだよな……。けど、本人が「大丈夫」としか
言わないから、どうするべきかと思って。
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プロデューサー相手に、
簡単に弱音を吐くような性格じゃないですしね。
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……だったら、ここはいったん、
私に任せてみませんか?
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ええ。私はその場にいなかったし、
何か、きっかけが作れるかもしれません。
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それに伊織も、本心ではプロデューサーに
相談したいと思っているんじゃないかなって。
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そうだといいんだけど……。
すまない、律子。頼んでもいいか?
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本当だ……う~ん。
こういう時、どうしたらいいんだろう……。
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あら……?
3人とも、こんなところで何してるの?
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あっ、律子さん……あの、レッスンが終わったのに、
伊織ちゃんが全然戻ってこなくて……。
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居残りレッスンするって言ってたけど、あんまり遅い
からさ。自分たち、心配になって来てみたんだけど……
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伊織さん、朝から元気がなかった気がするんです。
何かあったんでしょうか……?
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なるほど……。これは、本人と話した方が早そうね。
……伊織ー、入るわよ?
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……律子?
それに、みんなも……どうしたの?
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どうしたの、じゃないでしょ?
みんな伊織を心配して、様子を見に来たのよ。
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頑張るなとは言わないけど、
可奈や可憐にまで心配かけちゃダメじゃない。
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そ、そうだったの。
心配かけてたなら、悪かったわ……。
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あの……。い、伊織ちゃん、何かあった……?
今日はずっと、元気がないみたいだったけど……。
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そうだぞ、伊織。それとも、
自分たちにも話せないこと?
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別に、そういうわけじゃないけど……。
まあいいわ、大した話じゃないし。
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そんなこと……。だってだって、
伊織さんとおうちは、関係ないじゃないですか!
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そうね。でも、周りの見方は変わらない。
私より水瀬財閥……。
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価値があるのは私自身じゃない。
そう言われてるみたいで、やんなっちゃうわ。
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そんなことないぞ! 大体、伊織が
頑張ってたのは、家とは何の関係もないでしょ!
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でも、事情を知らない人にはわからないでしょ?
実力じゃなく家の力だと思っても、不思議じゃないわ。
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……伊織の言いたいことはわかったわ。でも、
伊織が納得しちゃったら、ダメなんじゃないの?
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伊織までそれを認めたら……今までの努力が、
本当に全部無駄になるわよ。
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だって、伊織が今までしてきた努力なのよ。
そんなふうに否定されて、本当にいいの?
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違うって、自分でもわかってるでしょ?
なら、伊織が自信をなくしてどうするのよ。
45
……だったら、なんでいつまでも変わらないの!?
これ以上、何が足りないって言うのよ!
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いつか絶対変わる……私ならできる……
そう信じて、努力してきたわ!
47
でも、こんなふうに現実を突きつけられちゃったら……
自分を信じたくても、信じられないじゃない……。
49
……あのさ、伊織。それって、
プロデューサーには話せないこと?
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そうね。私たちと伊織は、同じアイドル……
アイドル同士は、最終的にはライバルよね?
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もし伊織がここで脱落するなら、
私たちにとっては、チャンスでもある。違うかしら?
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なっ!? ……律子!
あんた、なに言って……!
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でも、プロデューサーはそうじゃないわ。
伊織のライバルじゃなくて、一番の味方よ。
57
私も、そう思います! プロデューサーさんは
いつだって、私たちのことを一番に考えてくれて……。
58
私が自信をなくして落ち込んじゃった時は、
たくさん励ましてくれてるんです! 元気になるまで!
59
うん……。伊織ちゃんのこと、そばで見てきた
プロデューサーさんなら、きっと……。
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伊織ちゃんの思いを……誰よりも、
わ、わかってくれると思う……!
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そうそう! それにプロデューサーも、
伊織のこと考えて、心配してると思うしね。
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……。みんな、ありがとう。
少し、アイツと話をしてくるわ。
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話をするっていっても、
何から言えばいいのか……あら?
66
プロデューサーじゃない。
こんなところで何してるのよ。
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話……そうか。
なら、ついでに少し付き合ってくれないか?
72
付き合ってほしい場所って、ここ?
ただの公園じゃない。
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うん。
伊織も、この公園のことは知ってるよな?
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そりゃ知ってるわよ。劇場からも近いし、
みんなもよく来る場所だし。
75
そうだな。それじゃ、伊織の目から見て、
この公園はどうだ?
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どうって言われても、公園は公園でしょ?
……ああでも、いつも綺麗よね。ここ。
77
それに、小さい子が遊んでいるのをよく見るし……
みんなが楽しめる、いい公園なんじゃない?
78
うん、そうだな。
じゃあ……あれは、知ってたか?
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うん。この公園の一部は、
伊織の実家の寄付で作られたものなんだそうだ。
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それに、この公園だけじゃない。駅前の開発支援や、
学校なんかにも寄贈しているそうだよ。
83
水瀬財閥は、ただ大きい企業ってだけじゃない。
色んな社会貢献をして、大勢に影響を与えてる。
85
もちろん、伊織のお父さんやお兄さんが、そこに
直接関わっているかどうかはわからないけどな。
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……ええ、そうね。あの人たちのことだもの。
見ているかどうかなんて、わからないけど……。
87
でも、結果として、こうして公園ができて。
みんなが楽しく過ごせている……。
89
……ちっとも知らなかったわ。
なによ……けっこう、ちゃんとしてるんじゃない。
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いろいろ話を聞いて、改めて思ったよ。
伊織のライバルは、とんでもない相手だなって。
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けど、伊織のライバルなんだ。
それくらいの相手じゃないと、張り合いがないだろう?
92
ふっ……ふふっ。そうね、そのとおりだわ!
スーパーアイドル伊織ちゃんのライバルですもの。
93
それくらいじゃなくちゃ、歯ごたえがなくて
相手をする気にもならないわ!
95
そうね。何をどうしたら勝てる相手なのか、
正直見当もつかないけど……。
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だからって、立ち止まってる場合じゃないわね。
きっと、相手は待ってなんかくれないもの。
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ああ。それから、
ひとつ大事な事を忘れないでほしいんだけど……。
99
伊織はひとりだけど、ひとりじゃない。
頼りになる仲間と、優秀なプロデューサーがいるだろ?
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疑ってるな……とにかく、
これだけは忘れないでほしい。
102
伊織の努力は、伊織だけのものだ。家は関係ない。
伊織が合格したのも、実力だって俺は信じてる。
103
……ええ、そうね。いくら家の名前があったって、
突然、ステップが上手くなったりしないわ。
104
今の私がいるのは……私が、
歌もダンスも、たくさんレッスンしたからよ。
105
そういう事だ!
……イベント、大丈夫そうか?
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ええ。私の仕事は、ライブで
来てくれたみんなを楽しませること! でしょ?
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そうだな。
それがわかってるなら、大丈夫だ。
108
プロデューサー、私を誰だと思ってるの?
伊織ちゃんの実力、見せてあげるわ!
109
それと……アンタのお手並みも
拝見、ってとこかしら? にひひっ♪