(紗代子に、初めてイベントの出演オファーがきた。 今日は、会場の下見に来ている……)
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(紗代子に、初めてイベントの出演オファーがきた。
今日は、会場の下見に来ている……)
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劇場のステージと、全然雰囲気が違う……。
ここが、今度の会場なんですね!
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このライブを成功させたら、もっとたくさんの
オファーが来るかもしれません。頑張らないと!
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はは、気合い充分だな。でも今日は下見だけだし、
わざわざ一緒に来なくても良かったのに。
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いえ! 実際にこの目で見て、
ステージの感覚をつかんでおきたかったんです!
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そうか。でもステージの感覚を知りたいなら、
劇場でも良かったんじゃないのか?
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いえ、それじゃダメなんです!
あっ……私、ちょっと準備してきますね!
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はい、できるかぎり本番と同じ状態でやりたくて……。
さっそく、ステージの上を歩いてみますね!
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えーと、端から端までの距離は……。
1歩、2歩、さん……わ、わわっ!?
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す、すみません! コードにつまづいちゃって……。
でも大丈夫です、ケガはしてませんから!
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え? ……あっ!?
す、すみません、スタッフの人と間違えましたっ。
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もしかして紗代子……
メガネを外すと、よく見えないのか?
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はい、実は……。でも、そこまでじゃありませんよ?
ちょっと、ぼやけるっていうか……。
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本当はコンタクトを使えばいいんでしょうけど、
体質的に合わないみたいで……。
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そうだったのか。
今までの公演は、どうしてたんだ?
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はい! 事前のレッスンで、照明やセットの位置を
ばっちり把握してから、ステージに上がってました!
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そうだったのか……。でもそんなに大変なら、
律子みたいにメガネのまま出てもいいんじゃないか?
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いっそ、メガネアイドルとして売り出してみるとか。
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いえ、それはダメなんです!
私、あの子と別れた時、メガネをかけてなくて……。
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あの子……アイドルになって、
一緒のステージに立とうって約束した子のことか?
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はい。メガネをかけていたら、あの子に、私だって
気づいてもらえないかもしれないです。だから……。
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……わかった。なら、今度から外でライブする時は、
会場の下見ができるようにスケジュールを調整するよ。
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えっ!? プロデューサー、いいんですか?
これは、私のワガママみたいなもので……。
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気にしなくていいよ。
アイドルの望みを叶えるのが、俺の仕事だからな!
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それじゃあ、下見を続けよう。
で、思ったんだけど……。
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メガネを外すのは、先にステージの感覚を
つかんでからでもいいんじゃないか?
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えっ? えっと、つまり……
まずメガネをしたまま、ステージの感覚を……。
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た、たしかに!
そのほうが、確実にステージを覚えられますね。
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ありがとうございます、プロデューサー!
私、メガネ取ってきますね!
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(……一見、しっかりしてるように見えるんだけどな。
これからも、いろいろとフォローが必要そうだ!)