(紗代子の初公演は、無事に成功した。 でも、だからと言って気を抜くことはできない)
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(紗代子の初公演は、無事に成功した。
でも、だからと言って気を抜くことはできない)
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(まだスタートを切っただけ、先は長い。
これから、どんなプロデュースをしていこうか……)
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はぁ……はぁ……あ、プロデューサー!
おはようございます!
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紗代子?
どうしたんだ、そんなに息を切らせて。
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はい! 今日は、劇場まで走ってきたんです!
えっと……ちょうど2駅分ですね!
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2駅分? ずいぶん走ったんだな……。
けど、どうしてそんなことを?
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ふぅ~……。ええと……この前の初公演で、
私には体力がないって実感したからです。
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公演の途中から、足が思ったように動かなくて。
息が上がったから、歌も乱れそうになりましたし。
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もちろん、体力作りも努力したつもりでしたけど……
全然足りなかったんだって、気付いたんです!
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でも、初公演の時は緊張もあっただろうし。
多少は仕方ないと思うけど。
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そんなことありません!
もっと努力して、力をつけないと……。
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じゃないと、TVに出られるようになりません!
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あ……はいっ!
私はそのために、アイドルになったので……。
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もちろん、アイドルになりたいのが先です!
でも私は、約……そく……。
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あの……私、小さい頃に、すごく仲のいい幼なじみが
いたんです。家も近くて、いつも一緒でした。
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一日中、ずっと一緒にいることも珍しくなくて。
ふたりでよく、アイドルごっこをして遊んでたんです。
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……へえ。紗代子はそんな小さい頃から、
アイドルが好きだったのか。
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はい、大好きでした! 可愛くてキレイで、
とってもキラキラしてて!
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いつかふたりで、すごいアイドルになろうね!って。
あの子とは、毎日そんな話ばっかりしてました。
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でも……小学生の時に、私が引っ越すことになって。
ふたりでわんわん泣いた後……約束したんです。
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はい。離れ離れになっても、アイドルを目指そうって。
そして、いつか絶対、一緒のステージに立とうって!
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……きっとよくある、小さい頃の約束って思います
よね。いつの間にか、みんな忘れちゃうような。
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でも……私にとっては、大切な約束なんです。
とっても……大切なんです。
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(紗代子がオーディションの時に見せた、真剣な表情。
あの裏には、こんな思いがあったのか……)
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プロデューサーのおかげでアイドルになれて、
私……やっと、約束を果たす入口に立てました。
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でもあの子は、私がこうしている間にも、
もっと先に進んでるかもしれません。
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だから頑張って、急いであの子に伝えたいんです!
「私も、あの時の約束、忘れてないよ」ってこと……。
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うん、事情はよくわかったよ。
そういうことなら、まずは……。
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えっ……?
プロデューサー、どういうことですか?
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紗代子が頑張れる理由は、よくわかった。でも、
どこまで走り続ければいいかは、よくわからないだろ?
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なら、できるだけ長く、
遠くまで走れるようにしないと。
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途中で倒れたりしたら、ゴールまで……。
友達のところまで、たどり着けなくなるからな。
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そっか……そうですよね!
プロデューサー、ありがとうございます!
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いつか必ず、約束を果たすためにも。
私、マラソンを走るつもりで、アイドル頑張ります!
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よし、俺もプロデューサーとして、しっかり
伴走するよ。……紗代子が約束を守れるように。
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プロデューサー……。
はいっ! よろしくお願いします!
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とりあえず、今日のレッスンは夕方からにしようか。
まずはしっかり、ランニングの疲れを取らないとな。
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はい、わかりました! ……あっ。
プロデューサー、さっきの話ですけど……。
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一応、みんなには秘密にしてもらえませんか?
子どものころの夢なんて、ちょっと恥ずかしくて……。
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そうか? 別にいいと思うけど……。
まあ、紗代子がそう言うなら内緒にしておくか。
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ホッ、よかった……。
あ、それじゃ、これも約束ですからね♪
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(紗代子と笑顔で交わした、たわいもない約束。
これからも、しっかり守ってやらないとな)
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(いつか、紗代子が約束を果たす日まで。
紗代子の隣を、走り続けよう!)