(美也が、初めてオーディションに合格した。 地方の深夜番組アシスタントだが、合格は合格だ)
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(美也が、初めてオーディションに合格した。
地方の深夜番組アシスタントだが、合格は合格だ)
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美也! この前受けたTV番組のオーディション、
合格したぞ! おめでとう!
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お~、本当ですか~? やりましたね~。
私の作戦が、成功したのでしょうか~?
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作戦……って。
美也、オーディションで何かしたのか?
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はい、早口言葉を~。番組アシスタントなので、
滑舌が良いほうが、いいかと思いまして~。
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美也、早口言葉なんてできたんだな……。
それで、どんなのを披露したんだ?
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では、やってみましょう~。
プロデューサーさん、準備はいいですか~?
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……拙者親方と申すは、御立会の内に御存知の御方も
御座りましょうが~、御江戸を発って二十里上方~、
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相州小田原一色町を御過ぎなされて、青物町を
登りへ御出でなさるれば、欄干橋虎屋藤右衛門~、
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はい~。ういろう売りの口上です~。
発声や滑舌の練習でも、使いますよね~。
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うん、たしかに間違ってなかったし、アピールと
しては個性的だ。それがよかったのかもしれないな!
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むふふ、そうかもしれません~。
おじいちゃんに感謝ですな~。
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へえ、その口上は、
おじいさんに教えてもらったのか?
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そうなんです~。
私とおじいちゃん、とっても仲良しなんですよ~。
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子供のころは、よくおじいちゃんに、
縁側でお茶を飲みながら遊んでもらいました~。
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囲碁や将棋を指したり、古いお話を聞いたり……
とっても楽しかったです~。
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(そうか。美也の言葉遣いが少し古風なのは、
おじいさんの影響だったのか……)
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なるほど。美也とおじいさんは、仲がいいんだな。
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はい~。オーディションに合格したこと、
おじいちゃんに伝えないとですね~。
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きっと喜んでくれると思いますよ~。
プロデューサーさん、ありがとうございます。
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お~、そうだ。何か、お礼をしないといけませんね~。
そうですな~。
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……いや、そういうのはいいんだ。それに受かったのは
俺のおかげじゃなくて、美也の努力の成果だし。
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む~ん……。でもやっぱり、プロデューサー
さんに、ありがとうございます、なんですよ~。
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私が何度落ちても、オーディションを受けさせて
くれたのは、プロデューサーさんですから~。
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そうか……。じゃあ、気持ちだけ受け取っておくよ。
ありがとうな。それから、本当におめでとう、美也。
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うふふ、ありがとうございます~。
……なんだか、じーんとしてきましたよ~。
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プロデューサーさんに褒めてもらって、
嬉しさが何倍にもなりました~。
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このことも、おじいちゃんに話さないとですね~。
ふふふ。
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(柔らかな言葉と笑顔の奥に宿っている、
確かな夢と強い意志……)
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(今はまだ小さな仕事でも、これから少しずつ。
一緒に階段を上っていこう!)